12歳からイギリスに住み、現在同国で教授も務めている小野明子が想いを込めて作りあげた、英国ヴァイオリン小品集アルバム。イギリスの田園風景の朝霧から浮かびあがってきたような、どこか懐かしさを感じさせるメロディと淡いハーモニーをもつ小品たちを、小野が温かく、しかし凛とした独特の音色で紡いでいく。彼女の高い技巧は豊かな詩情と安心感につながり、作曲家ごとの特徴もさりげなく弾き分けられて、実に巧みで心地よい。有名作とは言えずとも、どの曲も聴く人それぞれの心に寄り添う佳品ばかりで、聴き進めるたびに愛すべき曲に出会える喜びは大きい。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2018年5月号より)
【information】
CD『霧の中から 〜英国ヴァイオリン曲集〜/小野明子』
スコット:タラハシー組曲
ブリッジ:ヴァイオリンとピアノのための4つの小品
フィンジ:エレジー
ウォルトン:カンツォネッタ&スケルツェット
ヴォーン・ウィリアムズ:ロマンスとパストラール
エルガー:3つの小品
小野明子(ヴァイオリン)
ゴウ芽里沙(ピアノ)
ナミ・レコード
WWCC-7865 ¥2500+税