鈴木理恵子と若林顕の夫妻によるデュオが、2つの大作ソナタに挑んだ。一流のヴァイオリニストでもあったレスピーギの詩的なソナタは、演奏機会自体が稀少だが、あえて取り上げた意気込みは、練りあげたニュアンスと端正なフォルムに昇華され、本作の価値を知らしめる好演になった。大詰めの詠嘆の美は胸に迫る。フランクの有名作でもスタンスは同様で、ありがちな表現に陥らないように細心の注意を払っている。そういったストイックな音づくりから漂う“大人の艶”ともいうべき情感は、パラディスとブーランジェ、ふたりの女性作曲家の小品でもひときわ魅力を放っている。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2018年5月号より)
【information】
SACD『レスピーギ:ヴァイオリン・ソナタ、フランク:同 /鈴木理恵子&若林顕』
レスピーギ:ヴァイオリン・ソナタ
フランク:同
パラディス:シチリアーノ
ブーランジェ:夜想曲ヘ長調
フォーレ:子守歌op.16
鈴木理恵子(ヴァイオリン)
若林顕(ピアノ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00661 ¥3200+税