話題の新星バリトン、本格“来日公演”が実現!
ニューヨークのジュリアード音楽院で4年間学び、2015年より名門シカゴ・リリック・オペラに所属。アンサンブル・キャストとして活躍しつつ、全米で放送された世界初演オペラ《Bel Canto》には主要キャストで出演も果たした、バリトンの大西宇宙。
「リリック・オペラは劇場が大きく、定番の人気作品から現代ものまでレパートリーも幅広い。スタッフや聴衆の耳も肥えています。最初にいただいた大きな役はオネーギン。途中降板した歌手に代わって終幕だけの出演でしたが、それで信頼を得て、いろんな役をやらせてもらえるようになりました」
そんな期待の若手バリトンが6月に来日し、プレトニョフ指揮&ロシア・ナショナル管によるチャイコフスキーの歌劇《イオランタ》(演奏会形式)でロベルト公爵役を演じ、その1週間後には待望の本格的なソロ・リサイタルに挑む。ピアノは筈井美貴。
「チャイコフスキーのオペラの、どこかクセのあるバリトン役を演じるのが楽しみです。また、浜離宮朝日ホールでのリサイタルは、米国での8年に及ぶ修業時代の集大成になるようなプログラムを組みました」
リサイタルの曲目で先ず目を惹くのは、シェイクスピアのテキストに20世紀前半、英国のフィンジが作曲した5曲からなる「花束を捧げよう」や、3曲からなるラヴェルの「ドゥルシネア姫に想いを寄せるドン・キホーテ」などの連作歌曲。
「大学院の後に通った養成スタジオで演劇メソッドの指導を受けました。特にシェイクスピアの長い台詞はみっちり憶えさせられたし、フランス語はジュリアードの隣のMETから来たコーチに厳しく仕込まれました。もともと、世界中から才能が集まるニューヨークでなら、様々な言語で多様なジャンルを学べると思って留学先に選んだのです」
オペラ・アリアもプーランク《ティレジアスの乳房》のプロローグや、コルンゴルト《死の都》第2幕の〈私のあこがれ〉(ピエロの唄)に加えて、ベルカント・オペラやモーツァルトまで、多彩にして盛り沢山。
「やはりイタリア語のオペラは外せない。《コジ・ファン・トゥッテ》と《ドン・ジョヴァンニ》は舞台でも演じました」
注目はロシアもの。リムスキー=コルサコフやラフマニノフの歌曲にチャイコフスキー《エフゲニー・オネーギン》のオネーギンのアリアまで圧巻だ。
「昨年11月に55歳の若さで亡くなられたロシア人のバリトン、ディミトリー・ホロストフスキーさんが昔から僕の憧れ…何と誕生日も同じなのです! 彼から多くのことを学びました。シカゴでお会いした時のことが今も忘れられません。今回の公演を彼に捧げたいと考えています」
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ2018年5月号より)
ミハイル・プレトニョフ(指揮) ロシア・ナショナル管弦楽団
チャイコフスキー:歌劇《イオランタ》(演奏会形式) 他
2018.6/12(火)18:30 サントリーホール
大西宇宙 バリトン・リサイタル
2018.6/19(火)19:00 浜離宮朝日ホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp/