ゆかりの大曲で告げる新たな歴史の幕開け
尾高忠明が大阪フィルハーモニー交響楽団音楽監督に就任し、4月に行われる記念すべき就任披露公演のメインに選んだのがブルックナーの交響曲第8番だ。
ブルックナーは言うまでもなく、大阪フィルの創設者朝比奈隆の重要なレパートリーであり、中でも第8番はまさに十八番(オハコ)であった。朝比奈は生涯に35回この大作を指揮し、そのうち22回が大阪フィルである。筆者も初期の1975年から数々の演奏に接したが、特に晩年の名演には圧倒的な感銘を受けた。朝比奈の後任の大植英次は2年目に初めて第8番を取り上げ、前首席指揮者の井上道義は任期の初年度に西宮公演でこの曲を演奏した。
朝比奈亡きあと、大阪フィルで同曲を振るのは尾高が3人目であり、しかも就任披露演奏会に選ぶところに、尾高の覚悟と意気込みの大きさをうかがうことができる。尾高はこれまで大阪フィルと100回以上共演しており、エルガーの3つの交響曲など記憶に残る名演も多い。ブルックナーは第9番と第7番も演奏している。尾高はこの後、5月から12月にかけてベートーヴェン交響曲全曲演奏会も控えており、これもまた大いに楽しみな企画だ。
さて、今回の就任披露演奏会のプログラム前半に置かれた三善晃「ノエシス」も見逃せない。これは尾高自身が72年に東京フィルで初演した曲で、その後、節目の演奏会で再演する(海外でも)など、お気に入りの曲である。ブルックナーとの対比も面白く、期待はいやが上にも高まるのである。
文:横原千史
(ぶらあぼ2018年4月号より)
第517回定期演奏会
2018.4/7(土)、4/8(日)各日15:00
フェスティバルホール
問:大阪フィル・チケットセンター06-6656-4890
http://www.osaka-phil.com/