来日を予定していたマレイ・ペライアは、本人の体調不良のため医師の強い勧めにより、3月初旬から始まるアジア・ツアーを全て中止、予定していた日本での3公演も中止となりました(2018.3.1主催者発表)
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マレイ・ペライアのリサイタルは、常に深い感動が胸に残る。こだわりのプログラムは、楽譜の裏側まで読み込み、徹底的に磨き抜いたもの。来日ごとに進化と深化を示し、終演後は聴衆が総立ちになって演奏を称える。彼はレパートリーを広げる際、自己のペースを守り、けっして無理はしない。現在の自分に合う作品を選び、完璧な形でステージに乗せる。
今回はJ.S.バッハの「フランス組曲第6番」で幕開け。ピアニストはバッハを演奏するとき古楽器の響きを強く意識する人が多いが、ペライアは現代のピアノの響きを存分に考慮し、ペダルも工夫して楽器全体を豊かにうたわせる。バッハはペライアが指の故障でピアノが弾けなかった時期に、じっくり楽譜と対峙した作品。それゆえ、深い精神性に根差した演奏を聴くことができる。
シューベルトでは、ペライアならではのリリカルな音色と豊かな歌謡性が発揮されるのではないだろうか。そしてモーツァルトにおいては、躍動感あふれるリズム表現とピュアな響きが横溢するに違いない。
リサイタルの締めくくりには、いまや巨匠と称されるようになったペライアの深遠かつドラマティックでスケールの大きなベートーヴェンをたっぷり聴くことができる。ピアノ・ソナタ第32番は、ベートーヴェンのピアノ音楽の集大成ともいえる特性を備えている次元の高い作品、ペライアの底力が示される。なんとぜいたくなプログラムだろうか。
文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2018年3月号より)
2018.3/23(金)19:00 サントリーホール
問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp/
他公演 2018.3/21(水・祝)彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール(完売)
3/25(日)水戸芸術館(029-231-8000)