いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2018

今年は北陸がモーツァルトに染まる!

昨年スタートした「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭」が今年も開催される。メインとして取り上げる作曲家は、古今東西多くの人に愛され続けるモーツァルト! 4月28日から5月5日の会期中、北陸新幹線開通以来いっそうの賑わいを見せる金沢の街が音楽で染まる。

文:飯尾洋一(ぶらあぼ2018年3月号より)


 金沢のゴールデンウィークを音楽で彩る「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭」が今年も開催される。昨年に引き続き、音楽祭のマスコット兼宣伝部長のキャラクターにはガルガンチュア(愛称ガルガンちゃん)が採用され、音楽祭を盛り上げる。昨年のベートーヴェンに続き、今年のテーマは人気の高いモーツァルト。第一線で活躍する大勢のアーティストたちを招き、モーツァルトの名曲を中心に、伝統芸能とのコラボレーション、吹奏楽の祭典、市民参加型プログラムなど、多彩なメニューがこの音楽祭の醍醐味だ。
 現時点で発表されている参加アーティストと大まかなプログラムのなかから、聴きどころをピックアップしてみよう。
 まずはオーケストラ。モーツァルトの生地からザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団、ポーランドからアマデウス室内オーケストラ、東京から紀尾井ホール室内管弦楽団(旧称は紀尾井シンフォニエッタ東京)を招く。これに地元、オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)が加わるという充実した陣容で、モーツァルトの代表的な交響曲をシリーズで演奏する。オーケストラごとのキャラクターの聴き比べが楽しそうだ。

 指揮者陣で目立つのはなんといってもウラディーミル・アシュケナージ(公演番号C11、C14、C21)。音楽祭の顔といえるような存在感を発揮してくれるのではないだろうか。また俊英リッカルド・ミナーシ(H11、C13、C22、C31、C33、魚津5/6)も話題を呼びそうだ。ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団の首席指揮者を務め、リヨン歌劇場管弦楽団やカンマーアカデミー・オブ・ポツダム他を指揮する一方、ヴァイオリニストとして古楽の分野でも活躍する才人である。これまでにOEKとたびたび名演を聴かせてきた広上淳一(C12、H14、H22)の参加も心強いところ。ほかにアグニエシュカ・ドゥチマル(C23、H31、H32)、ヘンリック・シェーファー(H23、C32、C34)、天沼裕子(C24)、鈴木織衛(CO2)が指揮を務める。
 モーツァルトといえば協奏曲も傑作ぞろい。ヴァイオリン協奏曲やピアノ協奏曲、フルート協奏曲、クラリネット協奏曲、フルートとハープのための協奏曲といった名曲がとりあげられる。ソリスト陣は大変強力だ。なにしろウィーン・フィルの元コンサートマスター、ライナー・キュッヒル(H12、A23、C32、福井5/2)がいる。泣く子も黙る本場ウィーン流のモーツァルトがここに。また、ベルリン・フィルの首席クラリネット奏者ヴェンツェル・フックス(A24、C33)も名を連ねる。もちろん、クラリネット協奏曲を演奏、世界最高峰の妙技を堪能できる。
 ピアニストもそうそうたる顔ぶれで、辻井伸行(C14、C21)、ペーター・レーゼル(A11、H22)、モナ・飛鳥(C22、KO2)、横山幸雄、菊池洋子(KO2、C13、A31フォルテピアノ)、三浦友理枝(H23、KO2)、木村かをり(A14)といった名前が並ぶ。注目すべきはモーツァルトのピアノ・ソナタ全18曲の演奏。国内外で活躍する名手たちがどんなモーツァルトを弾くのか。モーツァルトの奥深さ、多様な解釈の可能性について、思いを巡らせることになりそうだ。
 金沢ならではのモーツァルトへのアプローチとしては、日本の伝統芸能とのコラボレーションが挙げられる。能楽師の渡邊荀之助(H21)は、モーツァルトの最後のオペラ《皇帝ティートの慈悲》を舞う。能舞とモーツァルトがどう融合するのか、想像もできないが、オペラ・ブッファではなくオペラ・セリアが選ばれているのはわかるような気がする。また、箏とフルート、チェロのユニットも組まれるという。
 ほかに落語家桂米團治のオペラ《フィガロの結婚(金沢オリジナル版)》(津幡5/2、AK5、H24)、俳優西村まさ彦の「モーツァルトの内緒話」(高岡5/1、H33)、日本画家古澤洋子の絵とモーツァルト(A31)、ダンサー田中泯がモーツァルトを踊る(高岡5/2、H13、A22)など、異分野とのコラボレーションが数多く企画されている。
 これらに加えて、北陸・石川発の若手演奏家たちの公演や、地元で活動するアマチュアたちの演奏もあって、実に賑やか。昨年以上に地域の特色を生かした音楽祭になりそうだ。
      
いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2018
【プレイベント】 2018.4/27(金)~5/2(水) 
【本公演】 2018.5/3(木・祝)~5/5(土・祝)
石川県立音楽堂、金沢市アートホール、北國新聞 赤羽ホール ほか北陸エリア(福井・石川・富山)
問:いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭実行委員会事務局076-232-8111 3/6(火)発売
http://www.gargan.jp/