ファイナルもウィットに富んだ選曲で
10年間の“集大成”となる、鮮烈な響きを体感しておきたい。2007年の音楽監督就任以来、オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の音楽性を磨き上げてきた名匠・井上道義が、この3月をもって退任することに。ハイドン初期の名交響曲とプーランクの佳品という、いかにも井上らしい、ひと捻り効いたプログラムを携え、地元での最後の定期と東京定期公演に臨む。
1988年の楽団創設より初代音楽監督を務めた岩城宏之から、OEKを引き継いだ井上。岩城の遺志でもあった現代作品を大切にしつつ、アンサンブル力を高めることで、古典のレパートリーもいっそう深化させた。自身の咽頭がん闘病という困難も乗り越え、OEKは見事に現代的なセンスあふれる楽団へと変貌。そんな井上が、さらなる成長を信じ、OEKのタクトを後任のマルク・ミンコフスキへ託す。
井上が“最後”に選んだのは、ハイドンの交響曲第6〜8番「朝」「昼」「晩」。エステルハージ宮廷楽団の副楽長を務めていた29歳のハイドンによる標題作品は、協奏交響曲の趣で各パートの独奏箇所も多く、瑞々しい魅力に溢れる。時に楽員の自主性を引き出すかのような井上の音楽創りには、いかにも相応しい。
これに先立ち、ソリストにピアノの反田恭平を迎えて、“朝つながり”で、プーランクのピアノと18の楽器のための舞踊協奏曲「オーバード(朝の歌)」を。自在な活躍ぶりで、若くして鬼才と称される反田だけに、“新旧の鬼才”のぶつかり合いも楽しみ。きっと経験したことのない、刺激的なサウンドが生まれるはずだ。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2018年3月号より)
第401回 定期公演 フィルハーモニー・シリーズ
2018.3/17(土)14:00 石川県立音楽堂 コンサートホール
問:石川県立音楽堂チケットボックス076-232-8632
第34回 東京定期公演
2018.3/19(月)19:00 サントリーホール
問:サントリーホールチケットセンター0570-55-0017
http://www.oek.jp/