前橋汀子カルテット ベートーヴェンの傑作を弾く


 わが国の代表的なヴァイオリニストとして長く第一線で活躍し、今年演奏活動55周年を迎えた前橋汀子。ますます意欲的な活動を繰り広げる前橋が、室内楽の世界を深く追求するべく、初めて結成した弦楽四重奏団が「前橋汀子カルテット」である。第2ヴァイオリンに久保田巧、ヴィオラに川本嘉子、チェロに原田禎夫と、豪華かつ室内楽経験豊かな頼もしい名手たちがそろい、2014年の初公演以来大きな話題を呼び、定期的に活動を続けている。
 今回の公演は、中心レパートリーに据えるベートーヴェンから、暗い情熱と古典的な構成を併せもつ第4番、その名の通り緊密で厳しい佇まいの第11番「セリオーソ」、そして作曲者晩年の独特の軽みと深遠さを感じさせる最後の第16番の3曲。初期・中期・後期から1曲ずつ、大規模作品をあえて外した選曲は、カルテットとしての成熟度が問われるプログラムでもあり、彼らの意欲と自信のほどが伝わってくる。前橋たちが挑むベートーヴェンの深奥を見届けたい。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2017年10月号より)

2017.10/3(火)19:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700
http://www.hakujuhall.jp/