【会見レポート】東京バレエ団が20世紀三大巨匠の傑作をまもなく上演!

 東京バレエ団は9月8日より10日まで『〈20世紀の傑作バレエ〉ープティ/ベジャール/キリアン』を上演する。初日まで一週間を切った9月1日、同団初演となるローラン・プティ振付『アルルの女』に出演する上野水香とゲスト・アーティストのロベルト・ボッレ(ミラノ・スカラ座バレエ団エトワール)が出席し、記者懇親会を行った。
(2017.9/1 東京バレエ団 リハーサル写真:C)Kiyonori Hasegawa Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE)

左:上野水香 右:ロベルト・ボッレ

 『アルルの女』(1974年初演)は、フランスの小説家アルフォンス・ドーデの戯曲と、その戯曲に付曲されたビゼーの組曲に振り付けられた。闘牛場で見かけた女性の幻影を追い求めて身を滅ぼす青年フレデリと、その婚約者ヴィヴェットとの悲恋を描く。今回の上演では、ボッレ&上野(9/8,9/10)、柄本弾&川島麻実子(9/9)の2組がフレデリとヴィヴェットをそれぞれ踊る。

 東京バレエ団は初のプティ作品の上演にあたり今年5月、プティ作品のアーティスティック・ディレクターを務めるルイジ・ボニーノと、20年来ボニーノと協働するジリアン・ウィッティンガムの両名から指導を受けてきた(5月に行われた会見レポートはこちら)。現在、ウィッティンガムが再来日し、公演に向け最終リハーサルを行っている。

リハーサルの模様
C)Kiyonori Hasegawa

 ロベルト・ボッレはこれまでに、東京バレエ団と『白鳥の湖』(2004年)、『ジゼル』(15年)で共演を果たしており、上野とは15年9月にモスクワで行われた〈クレムリン・ガラ〉、翌年「ロベルト・ボッレ&フレンズ」で『アルルの女』パ・ド・ドゥを踊っているが、今回が全幕物で初共演となる。ボッレは上野を「素晴らしいダンサーで、『アルルの女』の役柄にぴったりな個性を持っている」と絶賛。上野も「ぜひ組んでみたい、一緒に踊れたら素敵だろうなと思っていた方。以前共演した際に、私を成長させてくれる大きな力を感じた。全幕でご一緒できることは大きな経験。リハーサルをしていく中で、毎日彼から学ばせていただいている」とボッレに信頼をよせる。

 プティから直接学んだ経験を持つボッレと上野。2人は恩師であるプティの思い出を次のように語る。
「プティの作品を最初に踊ったのは20歳頃で、『シャブリエ・ダンス』でした。その後も『カルメン』『若者と死』『ノートルダム・ド・パリ』、そして『アルルの女』と踊ってきましたが、彼の振付はシンプルながら強い印象や感動を生む、他の振付家よりもその点が抜きん出ていたと思います。登場人物が非常に強い個性を持ち、その役柄を解釈して踊りで表現することは、私の芸術家としての成長を助けてくれました。彼は踊り手に200パーセントを出し切るように求めます。リハーサル室に入るときはある意味『挑戦』『戦い』でした」(ボッレ)
「仕事を始めた当初若かった私は、バレエについて分からないことが多く、プティさんは一流になるためにはと、手取り足取り教えてくださいました。プティさんから学んだことは私自身とって非常に重要です。ボッレさんのお話を伺い、私も抜擢された演目が『シャブリエ・ダンス』だったので、共通点を感じています。ボッレさんとプティ作品で共演することは運命なのかもしれません」(上野)

 世界の第一線で長年活躍するボッレ。40代の彼はいまもなお、しなやかな踊りと青年のたたずまいを失わず、観客を魅了し続けている。「日々の節制、コンスタントな訓練が重要です。柔軟性や踊るために必要な力を保っていくためには体のケア、食生活、休養、研究も大事。アレッサンドラ・フェリが53歳で復帰しましたが、踊り手として身体を保つための方法は進化している。ダンサーの命が長くなったことは、年齢とともに重ねてきた人生経験を作品にも投影できる。皆さんも、私の様に飲酒せず、夜更かしせず、レッスンを毎日8時間して、規則正しい生活を送れば若さを保てますよ!」と笑いを誘う。

 ダンサーとして身体の維持を重要視するボッレにとって、『アルルの女』の全幕を踊るのは実に約10年ぶり、2度目となる。
「2008年に踊った際に感じた想いとは全く違う、新たな発見や感動がありました。フレデリは最初から精神的な不安定さが求められ、自殺に至る最後まで感情の振り幅が大きい役柄です。過去の愛、果たせぬ愛といったフレデリの苦悩を、私自身がいままで生きてきた人生経験と重ねて演じたいと思います」

 上野もまた本作にかける想いは強い。
「激しさと深さが同時に要求される作品です。最後の最後まで希望を失わずに彼に寄り添う表現が必要で、私が愛を注ぎ続けることで、知らず知らずのうちにフレデリがより死へと向かうパワーへと繋がっていくと思います。そういう表現を目指そうと思います。いまこの時期にボッレさんとこの作品を踊ることは大きな意味を持っていて、自分の全てを注いで良い舞台にしたいです」

 同団は『〈20世紀の傑作バレエ〉ープティ/ベジャール/キリアン』において、『アルルの女』の他に、イリ・キリアン振付『小さな死』(同団初演)、十八番のモーリス・ベジャール振付『春の祭典』も上演する。ボッレは「三大振付家の、すごくレベルの高い、そして抜きんでて美しい3作品を一つの公演で上演することはとても素晴らしい」と本公演の魅力を語った。

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東京バレエ団〈20世紀の傑作バレエ〉 『アルルの女』『小さな死』『春の祭典』(ぶらあぼ7月号)

《公演情報》
〈20世紀の傑作バレエ〉
「アルルの女」「小さな死」「春の祭典」
9月8日(金)19:00、9月9日(土)14:00、9月10日(日)14:00
東京文化会館
問:NBSチケットセンター03-3791-8888
*公演の詳細、配役は下記URLでご確認ください。
http://www.thetokyoballet.com/

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