山田和樹(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

日・独・仏の歴史的名作を体感する

 今年6月に3年にわたるマーラー・ツィクルスを完結させた山田和樹&日本フィル。9月の定期演奏会では、また新たに興味深いプログラムを披露する。最大の聴きものは、東京楽所との共演による石井眞木の「遭遇Ⅱ番」であろう。この曲は“日本フィル・シリーズ”第23作として書かれ、1971年6月に小澤征爾&日本フィルによって初演。このコンビによってレコーディングも行われた(EMIのディスクとして世界的に発売された)。「遭遇」とは、雅楽とオーケストラとの出会いだけでなく、「雅楽のための音楽」と「オーケストラのための雙(そう)」という2つの作品の出会い(同時演奏)をも意味する。山田らしい、過去の日本人作品への目配りと蘇演である。演奏会の最初には、石井のベルリン留学時代の師である、ボリス・ブラッハー(ヴァイオリニストのコリヤ・ブラッハーの父)の「パガニーニの主題による変奏曲」が取り上げられる。
 演奏会の後半は、イベールの交響組曲「寄港地」とドビュッシーの交響詩「海」という、海と関わりのあるフランス音楽が並べられる。地中海に面したモナコ公国にあるモンテカルロ・フィルの芸術監督を務める山田ならでは選曲といえよう。山田は、ブザンソンの国際指揮者コンクールで優勝し、スイス・ロマンド管弦楽団の首席客演指揮者を務めるなど、フランス語圏での活躍が顕著であり、フランス音楽との相性も抜群。このイベールとドビュッシーの作品でも色彩豊かでファンタジー溢れる演奏を聴かせてくれるに違いない。
文:山田治生
(ぶらあぼ2017年8月号より)

第693回 東京定期演奏会
2017.9/8(金)19:00、9/9(土)16:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
http://www.japanphil.or.jp/