アンリ・バルダ(ピアノ)

円熟の名称がもたらす深い詩情

C)Jean-Baptiste Millot

 フランスの名ピアニスト、アンリ・バルダが2年ぶりに来日し、横浜・高崎・長野・東京を巡るリサイタルツアーを行う。少し前までは、実演に触れられる機会が少なく、録音の数も限られているため「幻の巨匠」とも呼ばれたバルダだが、2000年代に入ってからは数年おきに来日し、繊細で、ときに奔放な、詩情溢れる演奏で聴衆を魅了してきた。
 これまでショパン、ブラームス、ラヴェル作品を中心に聴かせてきたが、今年のリサイタルの核に据えたのはシューベルトだ。それも最晩年に書かれた最後のピアノ・ソナタ第21番という、崇高な美しさを湛えた作品である。演奏時間にして30分以上を要する巨大なソナタだが、バルダの語るような音楽が別次元の世界へといざなってくれることだろう。リサイタル前半はJ.S.バッハの「平均律」第1巻、そしてシューベルトは即興曲もプログラミングしている。74歳を迎えた巨匠の、新しい顔を知ることのできる夜となりそうだ。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ 2017年8月号から)

2017.11/8(水)19:00 東京文化会館(小)
問:コンサートイマジン03-3235-3777 
http://www.concert.co.jp/

他公演 
2017.10/29(日)港南区民文化センター ひまわりの郷(045-848-0800)
11/2(木)高崎シティギャラリー(027-328-5050)
11/5(日)長野市芸術館 リサイタルホール(信濃毎日新聞社事業部026-236-3399