“両腕のないホルン奏者”としてヨーロッパで大きな話題を巻き起こしているフェリックス・クリーザーが初来日し、6月13日に都内で報道関係者やホルン関係者を対象とした「トークライブ&セッション」(主催:日本ホルン協会)を行った。
1991年ドイツのゲッティンゲン生まれ。生まれつき両腕がなかったが、わずか4歳の時に自らの意志でホルンを始めた。「4歳にして、なぜホルンだったのかは、自分でもよくわからない」という。
「両親は法律関係の仕事で、格別音楽に詳しいわけではありませんでしたが、いつも私がやりたいように自由にやらせてくれて、ユース・オーケストラでしばしばツアーに出るのも許してくれました」
13歳からはハノーファー音楽演劇大学でレッスンを受け、マルクス・マスクニティらに師事。2014年にはECHO賞のヤング・アーティスト賞を受賞したほか、著書も出版された。近年ではサイモン・ラトル、マリオ・ヴェンツァーゴなど著名な指揮者やスティングとも共演を果たすなど、多彩な活動が話題を呼んでいる。
ホルンを始めた当初は、楽器を床に置いていたが、6,7歳の頃から、現在も使用しているようなスタンドに楽器をセットして演奏しているという。3つのバルブは左足の親指〜中指で操作し、切り替えレバーは小指での操作で、押すとF管に切り替わるようにつくってもらっているとのこと。通常、ホルン奏者は右手をベルの中に入れて音色や音程を操作するが、クリーザーの場合はどうしているのだろうか?
「舌の位置、口の中の広さ、顎の位置などをさまざまに変えて、試行錯誤しながら自分の求める音を探していきました。モーツァルト、R.シュトラウス…それぞれ作品にふさわしい音色というものがあると思います。いろいろなことを試していくうちに自分の響きを見つけていったのです。普通、フォルテやピアノというと、音の強弱を指しますが、私がイメージするのは音色です」
クリーザーは、古典やダンツィなどはもちろん、リゲティやメシアンなどもレパートリーとしている。この日は、ピアノの津田裕也とともに、ベートーヴェンのホルン・ソナタ、R.シュトラウスのアンダンテ、シューベルトの「菩提樹」を演奏し、柔らかな音色と卓越したテクニックを披露した。
ドイツでも、TVなどメディアに引っ張りだこのクリーザーだが、「皆さんに注目してもらっているので、ホルンの魅力をたくさんの人に知ってもらえるような活動をしていきたい」と愛するホルンへの熱い思いを語った。
今回の来日では計8公演が予定されている。リサイタルでは、シューマン、ベートーヴェン、ラインベルガーなどを披露。また、東京交響楽団などオーケストラとの共演では、モーツァルトのホルン協奏曲第2番などを演奏する。
■リサイタル:
共演:津田裕也(ピアノ)
6/18(日)15:00 フィリアホール
http://www.philiahall.com/
6/20(火)19:00 武蔵野市民文化会館(小)
http://www.musashino-culture.or.jp/
6/21(水)19:00 兵庫県立芸術文化センター
http://www.gcenter-hyogo.jp/
6/25(日)15:00 名古屋/宗次ホール
http://www.munetsuguhall.com/
6/28(水)18:30 東広島芸術文化ホールくらら(小)
http://kurara-hall.jp/
6/30(金)19:00 アルカスSASEBO(中)
http://www.arkas.or.jp/
■協奏曲:
ユベール・スダーン モーツァルトの旅 第7回
共演:ユベール・スダーン(指揮)兵庫芸術文化センター管弦楽団
6/17(土)15:00 兵庫県立芸術文化センター
http://www.gcenter-hyogo.jp/
東京交響楽団 第651回定期演奏会
共演:秋山和慶(指揮) 東京交響楽団
6/24(土)18:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
http://tokyosymphony.jp/
■『僕はホルンを足で吹く 〜両腕のないホルン奏者 フェリックス・クリーザー自伝』
著:フェリックス・クリーザー/セリーヌ・ラウアー
訳:植松なつみ
ヤマハミュージックメディア刊
四六判208ページ
¥1,800(税別)
フェリックス・クリーザー公式サイト
http://www.felixklieser.de/