2度にわたるマーラー交響曲全曲演奏を経て、更なる高みへ
エリアフ・インバルがふたたび都響とマーラーを演奏する。このコンビは、既に2度のマーラーの交響曲全曲演奏会を行っているが、今回の「大地の歌」は、2012年9月から2014年3月まで遂行されたインバル&都響の「新マーラー・ツィクルス」、及び、14年7月の交響曲第10番(クック版)の続編といえるかもしれない。
インバルは、常に解釈の可能性を探求し、演奏のたびに新たなマーラーを披露する。特に3年前の交響曲第9番や第10番では、表現に一層の深みと大胆さを増していたので、同じ晩年の作品である今回の「大地の歌」はとても楽しみである。また、言うまでもなく「大地の歌」では、歌手が非常に大きな役割を担う。とりわけ長大な終楽章「告別」を歌うコントラルトは重要で、今回、現代を代表するマーラー歌手の一人であるアンナ・ラーションが招かれるのはこの上ない喜びだ。スウェーデン出身のラーションは、クラウディオ・アバドに才能を認められ、アバドのベルリン・フィルやルツェルン音楽祭でのマーラー演奏には欠かせない存在となった。ドイツ出身の気鋭のテノール、ダニエル・キルヒにも期待したい。
演奏会前半の交響詩「葬礼」も注目される。「葬礼」は、後に交響曲第2番「復活」の第1楽章となるが、若きマーラーは、それを単独の交響詩として出版しようとしていたのであった。マーラーの若き日の野心と晩年の澄んだ境地をインバルがどう表現するのか、興味が尽きない。
文:山田治生
(ぶらあぼ 2017年7月号から)
7/16(日)、7/17(月・祝)各日14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:都響ガイド03-3822-0727
http://www.tmso.or.jp/