ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団

幕開けから究極の勝負

 ノット&東響のコンビも4シーズン目を迎えた。精緻で繊細な東響のサウンドに立体感や生気を付与したノットが、全力かつ長期スパン(音楽監督の任期は2026年まで)で臨む音楽作りから、ますます目が離せないのは自明の理。何より、卓越した分析力とスリリングな即興性を併せ持つライヴ演奏は、予定調和とは無縁の感興と示唆に富んでいるがゆえに、どれも聴き逃すことができない。
 新シーズン定期の幕開けは、ブルックナーの交響曲第5番が主軸。当コンビのブルックナーは、3、7、8番に続く4作目となる。これまでの諸作では、荘厳、質朴、あるいは動的な各方向と一線を画し、作品のもつ多様な要素を浮き彫りにしながら、濃密かつ柔軟な名演を展開。中でも昨夏の8番は大絶賛を博した。そして今度はいわばそれ以上の本丸、“ピュア・ブルックナー”の極致ともいえる第5番だ。ノットの言葉「非常に美しい」が1つの鍵になりそうだが、どうあろうと期待度は著しく高い。
 前半は、人気の小曽根真がソロを弾くモーツァルトのピアノ協奏曲。何と6番だ。20歳時に書かれた同曲は、モーツァルト自身マンハイム・パリ旅行等で再三演奏したお気に入りの作品。溌剌とした愉しい音楽だけに、小曽根のノリとセンスがピタリとハマりそうだし、そもそも実演自体が稀なので、こちらも注目度が高い。
 バンベルク響の16年もの任期を成功裡に終えた後、今年からスイス・ロマンド管の音楽監督に就任し、ウィーン・フィルとの「大地の歌」のCDもリリースされるなど絶好調のノット。彼の今期初公演は、話題性に満ちている。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2017年5月号から)

第650回 定期演奏会 5/20(土)18:00
第60回 川崎定期演奏会 5/21(日)14:00
ミューザ川崎シンフォニーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp/

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