上岡敏之(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

いよいよ、上岡のブルックナー登場!

 新日本フィルの音楽監督に就任した今シーズン、徐々に自身の色を滲ませつつある上岡敏之が、同楽団で初めてブルックナーに挑戦する! これは、2007年ヴッパータール響との第7番における史上最長(?)の遅いテンポの演奏を知る者にとって、興味津々以外の何物でもない。だが5月定期「ジェイド」のポイントは、「ブルックナーが自分の交響曲の理想像が見え始めた時期に書いた交響曲第3番と、彼の崇拝するワーグナーが楽劇に入る前に書いた《タンホイザー》序曲という、それぞれ前期の作品の組み合わせ」、そして間に置くワーグナー「ヴェーゼンドンク歌曲集」のために「強く推した」(共に上岡談)ドイツの名歌手カトリン・ゲーリングの歌にある。
 ドイツの歌劇場で音楽総監督を務めた上岡の《タンホイザー》の表現も要注目だし、ブルックナーがワーグナーに捧げた交響曲第3番を、いかに関連付けるか? あるいは対比させるのか? ぜひとも生で体験したい。また第7番で論議を呼んだテンポについて、上岡は常々「楽譜の意味を考え、書いてある通りにやればそうなる」と語っており、それは一貫した彼のポリシーでもある。ならば第3番はどうなるのか? これも実演で確認するに限る。
 《パルジファル》や《ルル》などで共演した上岡が「言葉を大事にする素晴らしい歌手」と惚れ込む、ゲーリングの日本初歌唱も見逃せないし、新日本フィル側も「今シーズンの目玉の1つ」と太鼓判を押す。ともあれこの絶妙なプログラミング、ファンの視点で見ずとも、濃密かつ陶酔的な時間を得られること必至だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2017年5月号から)

第573回定期演奏会 ジェイド
5/11(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
http://www.njp.or.jp/