演出家カロリーネ・グルーバーが語る《ナクソス島のアリアドネ》

 11月23日に開幕する東京二期会オペラ劇場《ナクソス島のアリアドネ》は、プロローグと1幕からなるオペラで、前半の「前芝居」と後半の「オペラ」で構成される。あらすじはこうだ。

 前半の<プロローグ・前芝居>では、ウィーンの豪華な館で夜会の準備が行われている。館の主人が客をもてなすために用意した出しものはオペラ・セリア『ナクソス島のアリアドネ』とそれに続く道化たちによるブッファ。悲劇と喜劇の2つの出演者たちが出番を間近に控え準備している。そこに館の主人の気まぐれで、2つの演目、すなわち喜劇と悲劇を同時に上演せよと無理難題をつきつける。その難題に、出演者たちは大混乱。そんなことありえない、とはじめは憤っていた作曲家も、この前代未聞の上演を許してしまう・・・。
 後半は、館の主人の無茶な要求にこたえるかたちで喜劇と悲劇が同時進行する〈オペラ〉が上演される。

 モリエールの名喜劇《町人貴族》の劇中劇としてつくられ、シュトゥットガルトでの初演の後、独立したオペラ作品として改訂されて現在のかたちになった《ナクソス島のアリアドネ》について、演出家カロリーネ・グルーバーは、その演出コンセプトを次のように説明する。
(2016.10.27 都内稽古場 Photo:J.Otsuka/TokyoMDE)

カロリーネ・グルーバー

カロリーネ・グルーバー

 
「ホフマンスタールの台本は非常に多層的で、テキストにはたくさんの意味、テーマが隠れています。ばらばらになってしまいそうなテキストに、一環した赤い糸をつなげてコンセプトとしてわかりやすいものにしました。
 強調したかったのは、芸術家がかかえる過酷な問題です。芸術家が仕事の依頼を受けた時に依頼者(スポンサー)に妥協しなければいけないということがあり、現在においても芸術家はその苦しみを抱えています。〈プロローグ〉では、そんな芸術家の苦しみを、殺風景な地下のガレージという設定で表現しています。ウィーンの大富豪たちは夜9時の花火とご馳走の方が大事で、芸術家はそれよりも価値が低く、粗雑に扱われている訳です。
 〈オペラ〉になると一転して、真面目なオペラが繰り広げれます。ツェルビネッタの歌の中に〈もし神がいなくなったら私たちは沈黙するしかない〉というような意味の歌詞があるのですが、これが重要だと感じます。
 死しか考えられないアリアドネが、バッカスの登場によって新しい愛を見つけるという哲学的な変容が起きます。これはアリアドネだけでなく、登場する全ての人にも起きている、これは私の演出の特徴だと思います。愛の気持ちに目覚め、最後はシェイクスピアの『真夏の夜の夢』のように皆が幸せになるという、そういうコンセプトです。
 一つの愛が終わったら人生も終わりなのか、他にも可能性があるのではないか、考え方を変えて再生することが果たして人間にできるのか、この作品で私自身が考えていることです」

シモーネ・ヤング(左)、カロリーネ・グルーバー

シモーネ・ヤング(左)、カロリーネ・グルーバー

シモーネ・ヤング

シモーネ・ヤング

【23日、26日組】
左より)髙橋維(ツェルビネッタ)、加耒徹(ハルレキン)、伊藤達人(ブリゲッラ)、 安冨泰一郎(スカラムッチョ)、倉本晋児(トゥルファンデン)

左より)髙橋維(ツェルビネッタ)、加耒徹(ハルレキン)、伊藤達人(ブリゲッラ)、
安冨泰一郎(スカラムッチョ)、倉本晋児(トゥルファンデン)

左:カロリーネ・グルーバー 中央:髙橋維

左:カロリーネ・グルーバー 中央:髙橋維

【24日、27日組】
左より)清野友香莉(ツェルビネッタ)、近藤圭(ハルレキン)、伊藤達人(ブリゲッラ)、吉田連(スカラムッチョ)、松井永太郎(トゥルファルデン)、杉山由紀(作曲家)

左より)清野友香莉(ツェルビネッタ)、近藤圭(ハルレキン)、伊藤達人(ブリゲッラ)、吉田連(スカラムッチョ)、
松井永太郎(トゥルファルデン)、杉山由紀(作曲家)

中央)清野友香莉(ツェルビネッタ)

中央)清野友香莉(ツェルビネッタ)

左より)カロリーネ・グルーバー、清野友香莉(ツェルビネッタ)、杉山由紀(作曲家)、髙橋維(ツェルビネッタ)、 太田麻衣子(演出助手)、白理香(作曲家)

左より)カロリーネ・グルーバー、清野友香莉(ツェルビネッタ)、杉山由紀(作曲家)、髙橋維(ツェルビネッタ)、
太田麻衣子(演出助手)、白土理香(作曲家)

【関連記事】
初演から100年!日本初演を果たした東京二期会が《ナクソス島のアリアドネ》を上演

【公演情報】
東京二期会オペラ劇場《ナクソス島のアリアドネ》
2016年11月23日(水・祝) 17:00、24日(木) 14:00、26日(土) 14:00、27日(日) 14:00
日生劇場

指揮:シモーネ・ヤング
演出:カロリーネ・グルーバー

管弦楽: 東京交響楽団

装置:ロイ・スパーン
衣裳:ミヒャエラ・バールト
照明:喜多村貴
演出助手:太田麻衣子

執事長:多田羅迪夫(全日)
音楽教師:小森輝彦(23日、26日) 山下浩司(24日、27日)
作曲家:白土理香(23日、26日) 杉山由紀(24日、27日)
プリマドンナ/アリアドネ:林正子(23日、26日) 田崎尚美(24日、27日)
テノール歌手/バッカス:片寄純也(23日、26日) 菅野敦(24日、27日)
士官:渡邉公威(23日、26日) 伊藤潤(24日、27日)
舞踏教師:升島唯博(23日、26日) 大川信之(24日、27日)
かつら師:野村光洋(23日、26日) 原田 圭(24日、27日)
召使い:佐藤望 湯澤直幹(23日、26日)(24日、27日)
ツェルビネッタ:髙橋維(23日、26日) 清野友香莉(24日、27日)
ハルレキン:加耒徹(23日、26日) 近藤圭(24日、27日)
スカラムッチョ:安冨泰一郎(23日、26日) 吉田連(24日、27日)
トゥルファルデン :倉本晋児(23日、26日) 松井永太郎(24日、27日)
ブリゲッラ:伊藤達人(23日、26日) 加藤太朗(24日、27日)
ナヤーデ :冨平安希子(23日、26日) 廣森彩(24日、27日)
ドゥリヤーデ:小泉詠子(23日、26日) 田村由貴絵(24日、27日)
エコー:上田純子(23日、26日) 北村さおり(24日、27日)

問:二期会チケットセンター03-3796-1831
http://www.nikikai.net/

  • La Valseの最新記事もチェック

    • 11/13 新居由佳梨(ピアノ) 公演にむけたメッセージ
      on 2019/10/18 at 15:40

      ピアニストの新居由佳梨が、11月13日に東京オペラシティ リサイタルホールでソロとデュオ(共演はチェロの西谷牧人)のリサイタルを開催する。フランクとバッハを核とした内容となっており、今回の公演にあたり、メッセージをいただきました。 【動画メッセージ】新居由佳梨 ピアノリサイタル ぶらあぼ本誌11月号&#38;WEBぶらあぼでもインタビュー記事を公開中。 新居由佳梨(ピアノ) profile 新居由 [&#8230 […]