“ヴァリエーション”の世界への誘い
音楽的な円熟味と、聴衆からの人気を益々着実なものとしているピアニスト今川映美子。真摯な作品解釈とその実現度の高い演奏により、聴き手に新たな気付きや充足感をもたらしてくれる。そんな今川が2014年に完結したシューベルト・ツィクルスに続き、2015年から新たにスタートさせたシリーズが『パリゆかりの作曲家たち』だ。
第2回目を迎える今年は、バロック時代から近代までと年代的に幅広い6名の作曲家を取り上げる。プログラムに貫かれているテーマは「変奏曲」だ。ラモーで開始し、モーツァルト(K573)、クララ・シューマン(op.20)、モンポウ、フランク(op.18)の作品を経て、フォーレ(op.73)で締めくくるという、多彩なヴァリエーションの世界へといざなう。唯一、モーツァルトの「アダージョ K540」のみソナタ形式の作品だが、悲痛なロ短調が挿し色のような存在感を放つ。今川のアイディアとセンスの光る一夜となりそうだ。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ 2016年11月号から)
12/14(水)19:00 東京文化会館(小)
問:プロアルテムジケ03-3943-6677
http://www.proarte.co.jp