一段と成熟を深めた新星
昨年ショパン国際ピアノコンクールで優勝に輝いたチョ・ソンジン。その後、同コンクールのガラ・コンサートやオーケストラとの共演のために何度か来日しているが、聴くたびに、優勝者としての自覚が彼をさらなる高みに導いていることを実感する。
今度のリサイタルで取り上げるのは、ショパンに加え、チョの多面性を示すレパートリーだ。冒頭に置くのは、ベルクのピアノ・ソナタ。彼は、師事しているミシェル・ベロフの影響で近現代作品に積極的に取り組むようになったといい、これまでにもバルトークやプロコフィエフで新鮮な音楽を聴かせてきた。今回、あの端正なタッチでどんなベルクを披露するのだろうか。
そして、大好きな作曲家だというシューベルト。中でも彼にとって特別な作品である最晩年の3つのソナタから、第19番を演奏する。実はこの作品、コンクール前から決まっていた今年1月の彩の国さいたま芸術劇場公演でも弾いている。優勝者ツアーで多忙な中準備をしたはずだが、作曲家の心に寄り添う美しい演奏だった。しかし同時に、さらに弾き込んだ状態を聴いてみたいと思ったものだが、それが今度の公演で叶う。
コンクールでも高く評価された「24のプレリュード」については、とにかく生で聴いてみてほしい。清らかなピアノで感情の振れ幅の大きな音楽を奏で、ショパンの壮大な宇宙を描き出す。
コンクール後に決まった日本でのソロ・リサイタルは、実は今度が初めて。大ホールのステージに立つ新星は、一段と成熟を深め、想像を超える音楽を聴かせてくれるだろう。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ 2016年11月号から)
2017.1/17(火)19:00 サントリーホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp
2017.1/19(木)19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:神奈川芸術協会045-453-5080
http://www.kanagawa-geikyo.com
他公演
2017.1/9(月・祝)札幌コンサートホールKitara(オフィス・ワン011-612-8696)、1/12(木)福岡シンフォニーホール(092-725-9112)、1/15(日)ザ・シンフォニーホール(ABCチケットインフォメーション06-6453-6000)、1/20(金)愛知県芸術劇場 コンサートホール(CBCテレビ事業部052-241-8118)