フランス現代サーカスの異端児の“出世作”初上陸
「ダンスとサーカスのいいとこ取り」「アートと身体性のハイレベルな融合」で、いま世界的に盛り上がっているのがコンテンポラリー・サーカスだ。
ボワテルは中でも発想がぶっ飛んでいる異色の存在。2年前に来日した『リメディア』では舞台上にみっちりと並べられた大小の装置が、次から次へ極小から極大まで全てが崩れ去った。あまりに徹底的な壊れっぷり、しかしじつに綿密に計算された構成に観客は魅了された。
本作はそんなカミーユの出世作にして、長らく封印され、再演が待たれていた作品だ。
ヨブは旧約聖書に出てくる。サタンがヨブの信仰を試すために様々な苦難を与える。罪なくして罰を受ける「義人の受難」だ。聖書では最後に報われるが、現実社会ではなかなかそうもいかない。舞台上のボワテルも様々な苦難に遭遇する。理不尽な人生への怒り、あるいは虚無にすら陥りながらも人生は続いていく。必死さは滑稽さに転じ、舞台は笑いに満ちたものになる。それは愚かさではなく、愛おしさのゆえである。人生は理不尽だが愛おしい。それが笑いと共にしみじみと実感できる舞台だ。
文:乗越たかお
(ぶらあぼ 2016年10月号から)
9/30(金)〜10/2(日)
東京芸術劇場 プレイハウス
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296
http://www.geigeki.jp