大谷康子 輪島漆塗りヴァイオリン「天の川」を弾く

いまベールを脱ぐ“洋魂和才”の響き


 世にも美しい色彩を纏ったこの楽器から、一体どのように魅惑的な音色が紡ぎ出されるのか。本来は、オイルを主成分とするニスが塗られている、西洋の弦楽器。それは、楽器の音色にも大きな影響を及ぼす。そして、加賀・能登の名職人、八井汎親(やついひろちか)は「輪島の漆を塗った楽器を作れないか」と着想し、輪島漆塗りのヴァイオリン「天の川」を遂に完成。名ヴァイオリニストの大谷康子の手により、“洋魂和才”の響きの世界がベールを脱ぐ。
 漆を何層にも薄く塗り重ねてゆく中から、独特の艶と深みを生み出してゆく輪島塗りの技法。しかも、八井は「ただ見た目に美しい工芸品としてだけでなく、美しい音を奏でられる楽器に」との願いから、長く東京交響楽団コンサートマスターとして活躍した後、ソリストとして精力的に演奏活動を行い、「歌うヴァイオリン」と、聴衆の絶大な支持を受ける大谷から、様々な助言を得たという。
 今回のステージは、ピアノの藤井一興が共演。前半では、外山雄三「日本民謡による組曲」をはじめ、武満徹の「映画音楽集」、この楽器が生まれた加賀にちなんでの古関裕而「百万石音頭」や渡辺俊幸「利家とまつ」、さらに服部隆之「真田丸」など最新の大河ドラマのテーマまで、“和才”の邦人作曲家の多彩な作品を。そして、後半ではフランクのヴァイオリン・ソナタに、ドビュッシー「月の光」など藤井のソロを交えつつ、和と洋が再び交錯する。誰もまだ知らない、“洋魂和才”の響き。ぜひご自身の耳で、体験していただきたい。
文:笹田和人
(ぶらあぼ 2016年9月号から)

9/12(月)19:00 ヤマハホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
9/25(日)14:00 北國新聞赤羽ホール
問:北國新聞読者サービスセンター076-260-8000
http://yasukoohtani.com