ゲヴァントハウス弦楽四重奏団 & 仲道郁代(ピアノ)

200年超の伝統の響きで味わう超名曲

 積み重ねがモノをいう弦楽四重奏にとって、伝統ほど強い武器はない。その意味で最強というべきゲヴァントハウス弦楽四重奏団が、秋に来日公演を行う。彼らは、1809年ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のメンバーによって創設された、世界最古の弦楽四重奏団。このジャンルの確立者ハイドンの没年から今日に至るまで、同楽団の首席奏者を軸に活動してきた。共演者の顔ぶれは、クララ・シューマン、ブラームス、グリーグなど音楽史そのもの。そうした歴史が染み込んだ滋味深い響きと模範的な解釈、緻密な表現力を併せ持つ演奏で、聴く者を魅了している。
 現メンバーは、1987年に22歳でゲヴァントハウス管の首席コンサートマスターに任命され、93年から同四重奏団の第1ヴァイオリン奏者を務めるフランク=ミヒャエル・エルベンを中心とした4名。
 さらに今回は、デビュー30周年を迎えた人気ピアニスト・仲道郁代が広がりを加える。演目は極め付けの名曲集。ハイドンの「ひばり」は、ひばりのさえずりに似た主題で知られる、古典派の中でも親しみやすい1曲であり、ドヴォルザークの「アメリカ」は、通常ならメインを成す弦楽四重奏の大看板。アメリカ滞在中の作曲者が望郷の念をこめたメロディの数々が琴線を刺激する。そして仲道を加えたシューマンのピアノ五重奏曲。ライプツィヒゆかりの作曲者による同形態の代表曲にして、豊麗なロマンとダイナミズムが共生した魅力作である。この曲は円熟味を増す仲道と名手たちの応接が実に楽しみだ。滅多にないほど旋律美に富んだ本公演は、室内楽入門にも最適!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2016年8月号から)

9/29(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
https://www.japanarts.co.jp
※全国公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。