アラン・ギルバート(指揮) 東京都交響楽団

ウィーンとニューヨークを繋ぐ“伝統”

アラン・ギルバート ©Pascal Perich
アラン・ギルバート ©Pascal Perich

現ニューヨーク・フィル音楽監督のアラン・ギルバート。音楽一家に育ったニューヨーカーだが、日系人ということで親近感を抱いている人も多いだろう。就任直後、そして一昨年の同団との来日で活躍ぶりも伝わってきたが、そちらが多忙なのか、日本のオーケストラに登場する機会はあまり多くなかった。
都響とも2011年の初共演の後しばらく間が空いたが、今年の1月に久しぶりに再共演を果たし、ワーグナー《指環》のギルバート自身による抜粋版などを披露した。そこから半年での再々共演だから、関係性もぐんと深まってくるはずだ。
今回のプログラムでは、ウィーンからニューヨークへと受け継がれる“伝統”が味わえそう。モーツァルトの交響曲第25番は、若き作曲家がウィーンに旅行した際、当時この都市に起こりつつあったシュトルム・ウント・ドランク(疾風怒濤)運動に影響を受けて書かれた。第40番の交響曲と同じト短調で書かれ、自己の内面への厳しい眼差しが感じられる。
後半はマーラーの交響曲第5番だが、指揮者としてのマーラーにとっても、モーツァルトは大切な作曲家であった。マーラーはウィーン宮廷歌劇場の音楽監督から大西洋をまたぎニューヨーク・メトロポリタン歌劇場に移籍しているが、このとき彼はニューヨーク・フィルの音楽監督も務めている(ちなみにウィーン・フィルとニューヨーク・フィルは同じ1842年の創立)。
ニューヨーク・フィルの仕事ではいつも歴史を肌に感じると語ったギルバートだが、大西洋を越えた伝統を、今度は太平洋をまたいで都響にもたらしてくれるだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年7月号から)

都響スペシャル 7/24(日)14:00
第812回 定期演奏会 Bシリーズ 7/25(月)19:00
サントリーホール
問:都響ガイド03-3822-0727
http://www.tmso.or.jp