ラテンと都会的な感性を併せ持つ独自のサウンド
キューバで生まれ1930年代にニューヨークを中心に米国で大活躍した作曲家エルネスト・レクオーナ(1896-1963)。両国の国交回復を機に注目を集める彼の、ピアノ作品を集めたアルバムが登場。演奏者は阪神淡路大震災のボランティアでピアソラを演奏して以来ラテン音楽に傾倒し、今やその魂を伝える弾き手となった原山智子。
「レクオーナが活躍していた時代にも流れていた“自由”で“何でもあり”なあの街の空気と自分の内なる部分とが、普段練習で使用しているニューヨーク・スタインウェイを通して繋がった気がします。10代の頃から大好きだったグールドやホロヴィッツが愛したピアノでもありますので」
全6曲からなるスペイン組曲「アンダルシア」には移民2世のレクオーナから見た(一度も訪れたことのない)祖先の国の情景が音楽で見事に描かれている。
「それぞれがとても聴きやすく、誰もがどこかで聴いたことがあると思うような旋律で書かれていると思います。いちばん好きなのは第6曲の〈マラゲーニャ〉。趣味で7年間フラメンコを習っていたのでカンテ(歌)の声、踊り手の足や手の動きを想像しながら弾く事ができました。一方で第5曲の〈グアダルキビール川〉では楽譜にないアゴーギクを付けることによって魅力を引き出しました。そのあたりもラテン音楽ならではの醍醐味ですね」
「アフロ=キューバン舞曲集」では、スペインとアフリカという2つの豊かな土壌を持つラテン音楽とブロードウェイの都会的なセンスとが融合しているようなイメージも。
「確かに〈真夜中のコンガ〉では悪い連中が集まっている場面のような雰囲気がありますよね(笑)。他の曲でもオシャレで洗練されたテイストと共に、みんなを楽しませたいというエンターテインメント性も感じます。レクオーナ自身、即興で演奏することも多かったらしく、私も全てが楽譜通りではない自由な表現が許される作曲家だと捉えています」
姪のマルガリータ・レクオーナの手による「タブー」も必聴。日本では1970〜80年代、国民的人気番組『8時だョ!全員集合』の「ちょっとだけよ…」のテーマとして一世を風靡したあのメロディだ。
「編曲の小原孝さんに“キレイめでジャズ風に”とお願いしたら、中間部で倍音の上にジャズが流れる不思議な雰囲気の素敵なアレンジに仕上げてくれました。ラテンとジャズ、両国の融和を祈念して演奏しています。最後の余韻も平和への希望のつもりで…」
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年5月号から)
CD発売記念コンサート
4/30(土)14:00
世良美術館(神戸)(完売)
5/8(日)18:00
タカギクラヴィア松濤サロン
問:及川音楽事務所03-3981-6052
http://oikawa-classic.com
CD
『キューバの魂〜レオクーナ名曲集』
Beltàレコード
YZBL-1043
¥2500+税
4/20(水)発売