ノエ・乾(ヴァイオリン)

伝統に培われた深みのある音色と造形美

©Yannis Gutmann

©Yannis Gutmann

 フランコ・ベルギー派の直系の奏者に師事したヴァイオリニスト、ノエ・乾が、2010年以来6年ぶりに東京でリサイタルを行う。日本人の父とギリシャ人の母の下、1985年生まれの彼は、地元ベルギーや、フランス、ドイツで研鑽。コンクールでも、ナポリ・クルチ国際や、ニューヨーク・ヤング・アーティスト国際などで優勝を重ね、世界各地で活動を続けている。
 そんな彼が今回の公演のプログラムの中心に据えたのは、昨年発表した最新盤で、権威あるICMA国際クラシック音楽賞にもノミネートされている『IDENTITY』(独・Ars Produktion)の収録曲。シュルホフ「ソナタ第2番」、ヤナーチェク「ソナタ」、シマノフスキ「夜想曲とタランテラ」といった東欧の傑作だ。いずれも独特の憂いと綿密な構成を特徴とするが、乾は持ち前の美音と知的な解釈で、流麗な演奏を聴かせてくれることだろう。
 そして今回は、乾が最も敬愛する作曲家の一人、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第3番が演奏されるのも聴きどころ。この作品はピアノに高度な技巧が求められるため、共演のピアニスト、マリオ・へリングにも注目が集まる。89年ドイツ生まれで、ドイツ人の父と日本人の母を持つ彼は、これまでにコンクールで16回優勝。巨匠パウル・バドゥラ=スコダも絶賛する逸材だ。ベルギーとドイツの正統派が織りなす深みのある音色と、美しい造形美を心ゆくまで堪能しよう。
文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年4月号から)

6/11(土)19:00 東京文化会館(小)
問:藍インターナショナル03-6228-3732
http://www.ai-international.co.jp