田口千晴(ピアノ) 〜仲間と共に〜

ソロとアンサンブルで魅せる絶妙な音色使い

 「仲間と共に」——そんな副題をもつリサイタルを、ピアニストの田口千晴が開催する。「仲間」とは、田口が東京芸大の附属高校・大学時代から大切にしてきた友人だ。田口が得意とするシューマンの作品から、ピアノ五重奏曲変ホ長調を山中光、硲美穂子(ヴァイオリン)、三木冬子(ヴィオラ)、津留崎直紀(チェロ)と共演する。国内外でのステージ経験・アンサンブル実績が豊富なメンバーが揃うだけに、一層の期待がかかる。前半の独奏では、リストがベートーヴェン記念碑建立募金の呼びかけをし、それにシューマンが貢献しようと書いた「幻想曲」を取り上げる。ボンの市庁舎前で、田口は実際にこのベートーヴェン像と出会い、改めてこの作品の世界を表現しようと思い至ったという。若き日のスクリャービンが過度な練習で右手を壊して書いた「左手のための前奏曲と夜想曲」、そしてソナタ第5番の放つ妖艶な世界にも、田口の柔らかに輝くような音色でたっぷりと浸りたい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年3月号から)

4/17(日)14:30 王子ホール
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