ルネサンス、バロック、モダン、それぞれの楽器で魅せるバッハ
バッハのオルガン作品の全曲に挑む、10年をかけた12回のシリーズを昨年5月に完遂し、知的かつ熱い血の通った演奏で、国際的にも熱い注目を集める名手・椎名雄一郎。昨春に出版した、平易な言葉で“楽器の王”の構造や演奏の秘密を紐解く著書『パイプオルガン入門』(春秋社)も、重版が決定するなど好評だ。全曲演奏の完結を記念して、時代ごとにピッチや調律の異なる3種のオルガンを弾き分けて、佳品を聴き比べるユニークなステージ『バッハの世界』を開く。
全曲演奏の舞台にもなった、東京芸術劇場 コンサートホール。ここに設置されたフランス・ガルニエ社製のオルガンは、筐体を回転させることにより、ルネサンスとバロック、モダンの各オルガンを使い分けることができる、実は世界でも類を見ない画期的な楽器。椎名は「この楽器は、各時代の音楽に合わせて演奏できるようにと製作されました。各楽器を聴いた印象は、同じオルガンとは思えないほど、違っていることでしょう」と話す。
ステージでは、有名な「トッカータとフーガ ニ短調」や「パッサカリア ハ短調」をはじめ、「トリオ・ソナタ第3番」や「幻想曲とフーガ ト短調」、「オルガン小曲集」から「おお人よ、汝の罪の大いなるを嘆け」など、バッハのオルガン作品のエッセンスとも言うべき名曲を凝縮。「バッハも知っていたルネサンスやバロックの楽器だけでなく、彼にとっては“未知のオルガン”であるモダンの楽器も用いて、新しいバッハのオルガン音楽の世界をお楽しみいただければ」と椎名は語っている。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年4月号から)
4/17(日)14:30 東京芸術劇場 コンサートホール
問:アレグロミュージック03-5216-7131
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