オペラ最初期に書かれた“もう一つのエウリディーチェ”に挑む
コルネットとリコーダーの達人・濱田芳通が率いる古楽集団「アントネッロ」が展開するバロック・オペラ・プロジェクト「オペラ・フレスカ」。モンテヴェルディの三大作品に続く第4弾では、イタリアのルネサンス末期からバロック初期を生きたジューリオ・カッチーニの歌劇《エウリディーチェ》(本邦初演)を取り上げる。1600年12月に発表された本作は、出版譜としては最古のオペラ作品。濱田やカウンターテナーの彌勒忠史ら、名手たちの躍動感と生命力によって、現代に新たな生命を得る。
上演された最古のオペラとしては、1600年10月にフィレンツェで上演されたヤコポ・ペーリ作曲の《エウリディーチェ》が知られているが、後輩による上演を快く思わなかったカッチーニが、同じ台本で“競作”し、先んじて出版したのが本作。この後も、グルックらによって何度もオペラ化を繰り返されることとなるギリシャ神話に基づく物語は、妻エウリディーチェを追って黄泉の国へと向かう、英雄オルフェオの愛の喪失と復活を描く。
キャストには、舞台回しの役割を担う“悲劇”を演じる彌勒をはじめ、高山潤子(エウリディーチェ)、黒田大介(オルフェオ)ら実力派歌手たちが集結。さらに、簡素かつオーソドックスな家田淳による演出や、「アントネッロ」の器楽陣も、濵田の指揮のもとで一体となり、「作品が生まれた時のスピリット」をステージ上で蘇らせると共に、しなやかな感性で、作品から鮮烈な躍動感を引き出してゆく。今回もまた、「初演時もかくや」という衝撃体験が、お約束できよう。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年1月号から)
2016.1/23(土)17:00 川口総合文化センター・リリア 音楽ホール
問:リリア・チケットセンター048-254-9900
http://www.anthonello.com