紀尾井 明日への扉 10 日橋辰朗(ホルン)

至難な楽器で未来を開く稀有の俊才


 オーケストラ公演に接すると、時に存在が際立つ奏者と出会う。ホルンの日橋辰朗もその一人だ。1988年生まれの彼は、日本管打楽器&日本音楽コンクールで共に1位を獲得後、2013年日本フィルに入団。15年4月以降は読響の首席奏者を務めながら、室内楽などで引く手数多の活躍を続けている。彼の凄さは、ギネス級の難しさで知られる同楽器を巧みに吹きこなすだけでなく、作品の特質に沿った音楽を表現し得る点。日本人離れした発音とフレージングのなめらかさを駆使して、自在かつ多彩な演奏を聴かせる。
 今回彼は、優秀な若手が選ばれる『紀尾井 明日への扉』に出演。管楽器奏者としては稀な同ホール主催のリサイタルというのも、破格の評価の証しだ。演目は、シューマンやR.シュトラウスを含むオリジナル作品ばかり。モダン楽器の特性をフルに生かした難曲と、ロマンティックに歌う作品が並ぶ濃密な内容も、実力と自信を反映している。この機会にホルンの貴重な才能を知り、豊麗でふくよかな音楽を満喫しよう!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年12月号から)

2016.1/22(金)19:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061
http://www.kioi-hall.or.jp