天王洲水上オペラ2026《The Little Mermaid》
晩秋の運河に現れる、幻想的なステージ

※画像はイメージです

 東京・品川区の湾岸エリアに位置する天王洲アイル。運河沿いにアートスポットやオシャレなカフェなどが点在する、大人の隠れた人気スポットで、この秋、水上オペラが上演される。会場は、天王洲運河のキャナルイーストと呼ばれるエリアで、ここに水上ステージと客席台船を設置。運河そのものや背景に広がる街並みをも装置の一部とした、幻想的な舞台空間が出現する。

 上演作品の《リトルマーメイド》は、ドヴォルザークのオペラ《ルサルカ》に基づくおよそ90分の作品。《ルサルカ》はアンデルセンの童話『人魚姫』などを題材にしており、人間の王子様に恋した人魚姫の愛と悲劇を描いているが、今回は舞台を近未来都市にし、主人公ルサルカをリトルマーメイドに置き換える。元のオペラでルサルカが住む湖が天王洲運河となり、実際の運河の水面や天王洲の空が、照明を使いながら海底や近未来都市へと変化するという、まさにここでしか観られない特別な空間が体験できそうだ。

 本公演をプロデュースするのは、香港や東京を拠点に斬新な「イマーシブ(没入型)オペラ」を展開し、世界的に高い評価を受けるモアザンミュージカル代表の長谷川留美子。これまでに《KABUKI × パリアッチ》や《キス・オブ・トスカ》といった作品を発表してきている。演出は、オペラやミュージカルの第一線で活躍する田尾下哲。原作に対する深いリスペクトに基づいた読み替え演出には定評があり、今回も《ルサルカ》を《リトルマーメイド》へと変貌させる手腕に期待がかかる(全編英語歌唱)。

 主人公のリトルマーメイドを演じるのは、進境著しいソプラノの青木エマ。オペラはもちろんのこと、近年ではミュージカルや演劇にも進出。その活躍に注目が集まっている。さらに、彼女が恋する人間の王子を二期会のトップ・テノール城宏憲、彼女の父親である水の精を同じく二期会のトップ・バリトン与那城敬、そして外国の王女をソプラノの宮地江奈、魔女をメゾソプラノの鳥谷尚子が演じるなど、今をときめくスター歌手が集結した。演奏は、清水のりこがエレクトーンを担当。さらに、合唱団の代わりにダンサーが踊ることで、空間そのものが意味のある装置となる仕掛けも施されている。

 公演は11月6日、7日、8日の3日間で、客席数は約850席。また各日限定100名で開演前のプレシアター・パーティーに出席できるSS席も用意されている。晩秋の夜に、水辺で楽しむオペラ。大切な人を誘って行きたいイベントになりそうだ。

文:室田尚子

天王洲水上オペラ2026《The Little Mermaid》
~Harmonious nights between art and canal~
2026.11/6(金)、11/7(土)、11/8(日)各日19:00
天王洲運河・キャナルイースト(野外特設ステージ)
問 天王洲・キャナルサイド活性化協会 事務局 canal@canalside.or.jp
https://canal-art-moment.com


室田尚子 Naoko Murota

東京藝術大学大学院修士課程(音楽学)修了。東京科学大学・昭和音楽大学非常勤講師。NHK-FM「オペラ・ファンタスティカ」レギュラー・パーソナリティ。オペラを中心にアーティストのインタビューや演奏会の紹介記事、エッセイなどを手がけるほか、ミュージカル、ロック、少女漫画などのジャンルでも執筆活動を行なっている。著書に『オペラの館がお待ちかね』(清流出版)、共著に『ヴィジュアル系の時代 ロック・化粧・ジェンダー』(青弓社)など。