ゲルハルト・オピッツ(ピアノ) シューマン×ブラームス連続演奏会 第1回

ベートーヴェンに影響された2人に光を当てる


 これまでにも日本において、ベートーヴェンのソナタ全曲演奏会やシューベルトの連続演奏会など、得意とするドイツ・オーストリアもので意欲的な演奏会シリーズを行ってきたゲルハルト・オピッツ。この11月にスタートする待望の新シリーズは、シューマンとブラームスを組み合わせた全4回(1年に1回ずつ)にわたる連続演奏会だ。深い親交を結びながらも全く異なるタイプだった二人の天才が、ともにベートーヴェンを崇敬していたことに着目し、それぞれが受けた影響の違いを浮き彫りにするというもの。
 前半に取り上げるシューマンからは、作曲家の性格が如実に表れる「子供の情景」と「幻想曲」。とくに後者は、ボンのベートーヴェン記念像建立への寄付のために作曲され、ベートーヴェンの歌曲からの引用などもある、ベートーヴェンと深いつながりのある作品だ。
 一方、後半のブラームスからは、「2つの狂詩曲」に加え、大曲「ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ」が演奏される。ベートーヴェンの「ディアベリ変奏曲」と並んで変奏曲の名作と称されるこの曲で、ブラームスがベートーヴェンから引き継いだものが示されることだろう。シューマンが受けたのとは違った形の影響を、はっきりと見ることができそうだ。
 3人の作曲家達と深く向き合ってきたオピッツならではの、興味深いプログラム。自然で深い味わいを持つあたたかい音が、作品の内面性を静かに描き出し、新しい発見をもたらしてくれるに違いない。大いに期待しよう。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年11月号から)

11/19(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831
http://www.pacific-concert.co.jp