広上淳一(指揮) 水戸室内管弦楽団

名匠たちが奏でるモーツァルトとハイドン晩年の傑作

【※追記:来日中止に伴い、代役による公演となりました。】
詳細→ http://arttowermito.or.jp/hall/hall02.html?id=1287


 芸術文化に関して「東京には何でもある」という言葉はあながち嘘ではないが、水戸室内管が聴きたいなら水戸に向かうよりない。上野から特急で1時間。でもそれはきっと報われる小遠征になるだろう。国内のみならず、ホルンのラデク・バボラークやオーボエのフィリップ・トーンドゥルをはじめ、世界から最高峰のメンバーを集め、水戸だけのオリジナル・プログラムを、わずか700席の臨場感あふれるホールで上演する。最高の贅沢を味わうには相応の手間もかかるというものだ。
 さて94回目となる同団定期は、なんといってもモーツァルトのピアノ協奏曲第27番を弾くソリストのメナヘム・プレスラーに注目だ。1923年生まれだから、今年92歳。世界中でリサイタルやマスタークラスを開き、昨年は庄司紗矢香とのデュオでも新境地をみせた。つまりバリバリの現役なのだ。重みのある硬質のタッチに“枯れ”の気配はみられず、人間の能力は無尽蔵であるということをつくづく実感させてくれる。その元気ももらってこようではないか。
 プログラムは、ほかにハイドンの交響曲第102番、モーツァルトの「ジュピター」交響曲と、この規模のオーケストラが一番美しく鳴る古典派で固められているのが嬉しい。前回からメンバーに加わったヴァイオリンの竹澤恭子が今回も参加ということで、パワーアップしたアンサンブルも盤石だ。
 今回タクトをとるのは、3回目の客演となる広上淳一。音楽本来のリズムを殺さないリードをする指揮者だから、ソリスト集団の生み出す、うねるような流れにしっかりと道をつけてくれるはずだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年11月号から)

第94回 定期演奏会
11/20(金)19:00、11/21(土)14:00 水戸芸術館コンサートホールATM
問:水戸芸術館チケット予約センター029-231-8000
http://arttowermito.or.jp