松山バレエ団がヌレエフによる舞台を昇華
第22回神奈川国際芸術フェスティバルで、松山バレエ団が掌中の珠を披露する。演目は、1987年にルドルフ・ヌレエフ(1938〜93)が振り付けた『眠れる森の美女』全3幕だ。装置と衣裳を手がけたのは世界的舞台デザイナー、ニコラス・ジョージアデス。
松山バレエ団は、今は亡きスーパースターと長らく親交を重ねてきた。最初の接点は63年。ヌレエフが往年のプリマ、マーゴ・フォンテインと共に初来日した際、一行は森下洋子らの出迎えを受け、松山バレエ団でレッスンをしたという。その11年後、ヌレエフはモナコ王立グレースバレエ学校で名教師マリカ・ベゾブラゾヴァの指導を受けていた森下洋子と再会、彼女の資質に惚れ込んだ。
以来、ヌレエフは折々に森下をパートナーに指名して欧米の舞台および松山バレエ団で共演した。
清水の美意識が集約
ただし、今回の『眠れる森の美女』は「監修:清水哲太郎」と謳われている通り、同団の総代表でもある清水が原典のペロー童話を徹底的に掘り下げ、美しい未来を希求する物語に改編したもの。振付も現出演者の持ち味に合わせて加除がほどこされており、いわばヌレエフ=清水のリミックス版となっている。より多くの美術とダンサーを投入し、細部に至るまでスケールアップした舞台には、清水の美意識が集約されているのだ。コスチューム・プレイさながらの入念な衣裳や装置の数々に、しばし目を凝らしたい。
レジェンドが踊るオーロラ姫
主役のオーロラ姫を演じるのは、もちろん、森下洋子。小柄な肢体にチュチュを着けて現れるや舞台をひときわ輝かせ、観る者の視線を釘付けにするオーラは健在だ。64年の舞踊歴を誇る彼女の存在はすでに“レジェンド”の域にあり、年を経る毎にさらに幅広い年齢層の共感を呼んでいることは、けっして不思議ではない。
11年ぶりに神奈川で披露
開館40周年を迎える神奈川県民ホールの舞台で同団が『眠れる森の美女』を上演するのは11年ぶり。オーケストラピットに入るのは、70年の設立以来、神奈川県を拠点とした活動を続けている神奈川フィルハーモニー管弦楽団。日本のレジェンドと、横浜ゆかりのオーケストラの競演が実現する。
本公演に先がけて、 北とぴあ さくらホールでは、 スペシャルハイライトと銘打ち、森下洋子、松山バレエ団の出演で『眠れる森の美女』が上演される。音楽はオリジナル録音、演出・振付は横浜同様、ヌレエフ=清水による。
文:上野房子
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年10月号から)
『眠れる森の美女』全幕
10/24(土)15:30 神奈川県民ホール
問:チケットかながわ0570-015-415
http://www.kanagawa-kenminhall.com
関連公演
『眠れる森の美女』スペシャルハイライト
10/10(土)11:30 北とぴあ さくらホール
問:松山バレエ団公演事務局03-3408-7939
http://www.matsuyama-ballet.com