名門合唱団が聴かせる聖なる調べ
世界中から、一流のオペラやオーケストラが訪れる音楽大国日本。そんな日本で、残念ながらまだ欠けているもの、それは教会で営まれる音楽だろう。日々の礼拝や、クリスマスや復活祭のような祝日に演奏される音楽〜それは、ヨーロッパの音楽生活の深々とした根っこである。教会に通い、オルガンの響きや聖歌隊の歌に触れ、時に自分たちも唱和する、それは、オペラやコンサートが盛んになる遥か前から、繰り返されている人々の営みなのだ。
ドレスデン聖十字架教会合唱団は、そのようなヨーロッパ音楽の伝統を、最も美しいかたちで今に伝える名少年合唱団である。ラテン語学校の合唱団として創設されて以来、およそ800年に及ぶ歴史を持ち、「ドイツ音楽の父」と呼ばれる大作曲家ハインリッヒ・シュッツをはじめ多くの巨匠の薫陶を受けてきた。ドレスデンの旧市街に堂々とそびえる聖十字架教会の音響効果抜群の堂内で、聖十字架教会合唱団の歌声に接することは、ドイツ音楽の原点を体験することに他ならない。
今回のプログラムは、クリスマスを待つ待降節のために作曲された音楽が中心だが、「ハレルヤ」やバッハ(グノー編)「アヴェ・マリア」のようなポピュラーな名曲に加え、「菩堤樹」や「ローレライ」などのドイツ民謡も含まれている。礼拝同様に、オルガンがコンサート導入を飾るのも嬉しい。ドレスデン市民から愛されるカントール、ローデリッヒ・クライレの暖かな指揮ぶりに触れられるのも楽しみだ。
文:加藤浩子
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年10月号から)
12/1(火)13:30 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp