FLUX Quartet(弦楽四重奏団)


 アメリカの現代音楽シーンの最前線を走るフラックス・カルテットがこの秋、神奈川国際芸術フェスティバルに参加するため初来日する。プログラムは20世紀後半の大家(ジョン・ケージ、コンロン・ナンカロウ、エリオット・カーター)から現役(ジョン・アダムズ、ジョン・ゾーン)までアメリカ人作曲家を軸にしつつ、日本人の作品も加えている。そこには彼らの明快なメッセージが込められている。
「私たちはコンサートをプロデュースしてくれた一柳慧さんに敬意を表そうと考えました。一柳さんの弦楽四重奏曲第3番『インナー・ランドスケイプ』を演奏することも楽しみにしていますし、一柳さんの師でもあるケージの作品でラジオを用いた『スピーチ』では、一柳さんご自身が私たちと共演してくださいます。また、黛敏郎の『プリペアド・ピアノと弦楽のための小品』では、ケージの発明したプリペアド・ピアノを用います。プログラムのもう一つの要素として、アメリカの現代音楽シーンを象徴するような曲を紹介したいとも考えました。ナンカロウの『弦楽四重奏曲第1番』は私たちにとってとても大切なレパートリーです。ゾーン(今回は『デッドマン』が演奏される)は日本においてもフリージャズのカリスマとして認められていますが、彼とは共に創作・演奏活動を行っています」
 今回の公演ではニューヨーク・フィルのピアニストで、ニューヨーク州立大で教鞭も執るエリック・ヒューブナーと共演する。
「彼は現代音楽について私たちがもっとも尊敬するピアニストのひとりです。その素晴らしさはアダムズのピアノ・ソロ作品『フリジアン・ゲート』でご理解いただけるでしょう。エリックとはカーターの五重奏曲でも共演します。ゾーンはニューヨークのダウンタウン(マンハッタン南端)の現代音楽シーンで影響力がありますが、カーターはアップタウン(59ストリート以北)で同様に影響力を持っています」
 カルテットとしてどのような方向を目指すのだろうか。
「弦楽四重奏は音楽史の中でも最も確立された形式のひとつで、この伝統的な形式がどう進化していくのかを見るのは興味深いものです。独創性に富んだ作品を次世代の音楽家や聴衆に伝えていくことが私たちの責務です」
 フラックスの名前は60年代の“ポップアート”と並ぶ芸術運動「フルクサス」に由来する。
「第1ヴァイオリンのトム・チウが、『フルクサス』のモットー“everything goes”に影響を受けフラックス・カルテットを創設しました。一柳さんは『フルクサス』にも関わった方ですので、その意味でも光栄です。グループとしては今回が初来日ですが、私たちはみな日本の文化を深く尊敬していて、今回演奏する曲に対するみなさんの反応も楽しみです。まったく未知のサウンドに出会えると思いますよ!」
取材・文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年10月号から)

第22回 神奈川国際芸術フェスティバル 一柳慧プロデュース FLUX Quartet
10/17(土)15:00 神奈川県民ホール(小)
問:チケットかながわ0570-015-415
http://www.kanagawa-arts.or.jp