山下裕賀&小堀勇介&池内響の歌声で味わうベルカントの真髄

2025年の公演より
左より:矢野雄太、池内 響、山下裕賀、小堀勇介 ©松尾淳一郎

 浜離宮朝日ホールの名物企画のひとつ「浜離宮ベルカント・シリーズ」が3回目を迎える。初回から出演している小堀勇介に加え、第2弾で圧巻のパフォーマンスを披露し、同ホールの親密な空間に大熱狂の渦を巻き起こした山下裕賀、池内響、そしてピアノの矢野雄太が再び集結する。4月11日の浜離宮朝日ホールの他、19日には神戸朝日ホールでの公演も決定している。

小堀「前回は客席の熱量がすごく、曲が終わるたびにウワーッと反応がきて、それを浴びた我々もさらにボルテージが上がりました」

池内「とにかく楽しいコンサートでした。あそこまでの化学反応が起こるとは。舞台からの一方通行にならず、全ての時間をお客さんと共有できた、稀有な体験でしたね」

 前回、山下は《セビリアの理髪師》のフィガロとロジーナの二重唱で、手紙の代わりに大きく「ラブ」と書かれた巻物を持って登場して満場の笑いを誘った。あれは彼女の手作りだったそう。

山下「あの場面で手紙が出てくるのは皆さんご存知なので、ちょっと裏切りたいと思ったんです。掛け軸に大きく文字を書いて、池内さんに見せたらすぐに受け入れてくれました」

池内「普通の手紙でいいじゃん、とは言えませんでしたから(笑)」

©松尾淳一郎

ベルカントの難曲に挑む

 東京公演のプログラムにはロッシーニ、ドニゼッティ、ベッリーニと、ベルカントの代表的作曲家が揃う。

小堀「前半の核となるのはロッシーニの喜劇の中でまだ取り上げていなかった名曲《アルジェのイタリア女》。山下さんと池内さんの声でこれを聴きたいという僕の願望で選びました(笑)。後半はシリアスな作品から、アリアと重唱をお送りします」

池内「昨年は様々な役柄に挑戦しましたが、その中で一番自分の声質に合っていたのはドニゼッティ《愛の妙薬》のベルコーレでした。次はドニゼッティの強い性格のものをやっていきたいと思った時に、《ラ・ファヴォリータ》と言われて取り組んでみたいなと思ったんです。僕はシリアスな作品の湿っぽい演技も好きなので(笑)。色で言えば「黒」という感じ。今回のプログラムで一番、山にしている作品です」

小堀「実は山下さんも、マーラーがすごく好きだったり音楽の好みはシリアスな傾向があり、後半には二人の音楽観が色濃く出ると思います。ロッシーニもオペラ・セリアの《アルミーダ》を選びました」

 《アルミーダ》は若きロッシーニが、後に妻となる名歌手コルブランのために書いたドラマティックな作品である。

山下「《アルミーダ》のデュエットはロッシーニの難しいところが全て入っているような曲。自分の中ではデュエット系は全て山と捉えて歌っています。そしてソロで歌う、劇的なラスト・シーンも。頑張りたいです」

©松尾淳一郎

 小堀は、ベッリーニ《清教徒》からの、ベルカントの代名詞のような〈愛するあなたへ〉も注目だ。

小堀「この一年、いろいろな作品を歌ってきて自分の声の芯が少し太くなり、音楽の支えがよりしっかりしてきたという実感があります。ベッリーニの難しさはフレージングにつきるんです。〈愛するあなたへ〉は、レガートが一ヵ所でも緩んだ瞬間に全部終わる、みたいなイメージが僕にはあって、足がすくむ思いではありますが、今歌ったらまた違う景色が見えるのではないかなと思っています」

 ピアノはソリストとしての活躍も多く、イタリア・オペラはミラノ・スカラ座研修所で真髄を学んだ矢野雄太。

矢野「イタリア語の響きは簡単そうで難しい。僕も研修所で勉強した時に発音を何度も何度も直されました。でもその響きが理解できると、ベルカントも理解できる。イタリア語のナチュラルな響きを特に意識して、音楽を使って完璧に表現しているのがこの三人の作曲家です」

 神戸朝日ホールでは、東京の第2弾と第3弾の“いいとこどり”でロッシーニの喜劇ばかりとなる。池内は姫路、山下は京都出身だ。

山下「関西人として喜劇はとっても嬉しいんです。やっぱり新喜劇がバイブルになっていますから(笑)」

池内「里帰りのような気持ちもあります。何より、皆さんに心から楽しんでいただけたら嬉しいです」

取材・文:井内美香

(ぶらあぼ2026年3月号より)

浜離宮ベルカント・シリーズ第3弾
山下裕賀 & 小堀勇介 & 池内 響 with 矢野雄太
2026.4/11(土)15:00 浜離宮朝日ホール
問:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990
https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/

山下裕賀 & 小堀勇介 & 池内 響 with 矢野雄太 in 神戸
2026.4/19(日)15:00 神戸朝日ホール
問:フェスティバルホールチケットセンター06-6231-2221
https://www.kobe-asahihall.jp
※公演によりプログラムが異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。