豊かな情感をたたえた名作を集めて
今川映美子というと、シューベルト弾きの印象が強い方も多いことだろう。彼女は昨年、9年間にわたるシューベルトのピアノ・ソナタ全曲演奏会を完結させ、その評価を確かなものとした。
そんな今川が、一つの区切りを迎えた今新たに取り組むのは、「パリゆかりの作曲家たち」。ウィーン留学時代、ウィーン音楽漬けの生活を送りながらも探究を続けたたくさんのレパートリーから、パリに関係の深い作曲家に改めて向き合う形だ。演奏会は、ウィーンとパリ両方にゆかりのあるモーツァルトの、ピアノ・ソナタ第11番「トルコ行進曲付き」で始める。続くショパンの舟歌、ノクターン第7番やスケルツォ第4番では、彼女の繊細にコントロールされた多彩な音の表情を聴くことができるだろう。そして後半には、共演に石田泰尚(ヴァイオリン)、鈴村大樹(ヴィオラ)、門脇大樹(チェロ)を迎えてフォーレのピアノ四重奏曲第1番を演奏する。美しく豊かな情感をたたえた名作による、息の合ったアンサンブルに期待したい。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年9月号から)
10/13(火)19:00 東京文化会館(小)
問:プロアルテムジケ03-3943-6677
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