
右:岡本誠司 ©Yuji Ueno
この10月、東京フィルハーモニー交響楽団が名誉音楽監督チョン・ミョンフンと共に7ヵ国8公演を巡ったヨーロッパ・ツアーは、豊穣な収穫をもたらした。筆者は初日のベルリン・フィルハーモニーでの公演を聴いたが、長年の共同作業の成果が存分に表れた、カラフルで歌に満ちたものだった。
2月の定期演奏会でこの両者が提示するのは、19世紀ドイツのロマン派音楽。歴史あるヨーロッパの街や空気、聴衆の中で育んできたツアーの実りを披露するには最適のプログラムではないだろうか。
幕開けは2026年に没後200年を迎えるウェーバーの《魔弾の射手》序曲。チョン・ミョンフンというとミラノ・スカラ座の次期音楽監督への期待もあり、イタリア・オペラのイメージが強いが、実は名門シュターツカペレ・ドレスデンの首席客演指揮者のポストも長い。かつてウェーバーが宮廷楽長を務めたオーケストラとの豊富な経験ゆえ、単なる前プロに留まらない瞬間が生まれそうだ。
ブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番でソロを披露する岡本誠司は、2021年にミュンヘン国際音楽コンクールで優勝した実力者であり、現在もドイツを拠点に活躍している。美しい旋律が目白押しのこの名作を味わうのに過不足ないソリストだ。
メンデルスゾーンの「スコットランド」も、ドイツの初期ロマン派の傑作。今回はサントリーホールとBunkamuraオーチャードホールでの定期演奏会の間に、長岡市立劇場での特別演奏会も行われる。東京フィルとチョン・ミョンフンのコンビが、ヨーロッパの新鮮な風を届けてくれるに違いない。
文:中村真人
(ぶらあぼ2026年1月号より)
チョン・ミョンフン(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
第1028回 サントリー定期シリーズ
2026.2/18(水)19:00 サントリーホール
第1029回 オーチャード定期演奏会
2/23(月・祝)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
1/6(火)発売
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
https://www.tpo.or.jp
他公演 長岡特別演奏会
2026.2/21(土) 長岡市立劇場(長岡市芸術文化振興財団 事業課0258-29-7715)



