【CD】Did it again パスカル・デュザパン:ピアノ作品集/久末航

 『ゲームの規則』といえばジャン・ルノワール監督1939年の傑作映画だが、パスカル・デュザパン(デュサパン)の「7つのエチュード」は各曲において緻密に設定された規則を基に音たちがゲームを繰り広げる、想像=創造の練習曲/遊戯だ。ゲームに挑むのは久末航。エリザベート王妃国際コンクール第2位など活躍中の俊英が規則と自由の間で戯れる音たちを自在に操る。詳細な解説(訳あり)と共に聴けば面白さも一入。最後の「Did it again」は7曲のエチュードの要約のように書かれたミュンヘン国際音楽コンクール課題曲。この曲の演奏で特別賞を受賞した久末のヴィルトゥオジティが炸裂する。ゲームの勝者は、彼だ。
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2026年1月号より)

【information】
CD『Did it again パスカル・デュザパン:ピアノ作品集/久末航』

パスカル・デュザパン:ピアノのための7つの練習曲、ピアノ作品集第1番「Did it again」

久末航(ピアノ)

Genuin/東京エムプラス
SGEN 25944 ¥3700(税込)


矢澤孝樹 Takaki Yazawa

1969年山梨県塩山市(現・甲州市)生。慶應義塾大学文学部卒。水戸芸術館音楽部門主任学芸員を経て現在ニューロン製菓(株)及び(株)アンデ代表取締役社長。並行して音楽評論活動を行い、『レコード芸術online』『音楽の友』『モーストリークラシック』『ぶらあぼ』『CDジャーナル』にレギュラー執筆。朝日新聞クラシックCD評選者および執筆者。CD及び演奏会解説多数。著書に『マタイ受難曲』(音楽之友社)。ほか共著多数。