川久保賜紀(ヴァイオリン)

作品に最もふさわしい音色を追求しました

©Yuji Hori

©Yuji Hori

 近年は淡路島やワシントンD.C.で自らコンサートを企画するなど、プロデューサーとしての才能も発揮しているヴァイオリニストの川久保賜紀。今年4月に発表したエイベックス通算5枚目のソロ・アルバム『アンコール!』には、コンサートで人気が高かった小品を中心とした全10曲が収録されている。サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」、モンティ「チャールダーシュ」、ブラームス「ハンガリー舞曲第5番」、バルトーク「ルーマニア民族舞曲」、ラヴェル「ツィガーヌ」といった超絶技巧が駆使される傑作が並ぶ。
「これらの作品は聴きごたえがあるだけではなく、民族的な色彩が強いのも特徴。恩師のザハール・ブロン先生は音色へのこだわりが人一倍強い方だったので、その教えを思い出しながら、それぞれの国や地域の言語的なニュアンスを意識して、作品に最もふさわしい音色を追求しました」
 今回の収録曲の中で彼女が特に気に入っているのが、ガーシュウィン「3つのプレリュード」とサラサーテ「アンダルシアのロマンス」だという。
「『3つの〜』は、小さな頃から敬愛するハイフェッツの編曲ということもあり、かねてから録音したかった作品。甘美さとウイットのバランス感覚に惹かれます。『アンダルシア〜』は、ロマンティックで表情豊かな旋律が大きな魅力。アルバム冒頭のクライスラー3曲も含め、後半の超絶技巧曲と良い意味でコントラストをつけられたように思います」
 共演のピアニストは、名手・江口玲。録音でのタッグは今回が初めてだが、リサイタルでは度々共演しており、絶大な信頼を寄せている。
「江口さんは楽譜の改訂の歴史に精通していらして、共演の度に楽譜の入ったiPadを片手に『オリジナルはこうだったんだよ』と教えてくださるんです。それが刺激となって録音中にどんどんアイディアが湧いて、テイクを重ねる度に表現が大きく変わっていった曲もありました」
 録音は昨年の11月に稲城市立iプラザで行われた。
「今回は3日間のセッション録音だったのですが、同じ作品を繰り返し演奏して自分で聴き直す作業は、とても勉強になりました」
 9月後半には、島根(雲南市)と新潟(長岡市)で公演を行い、当盤の収録曲を多数披露する。ピアニストは近年共演機会の多い仲道郁代。「仲道さんの女性らしい繊細さをとても尊敬してます」とのこと。アルバムに収録された江口のピアノとの聴き比べという意味でも、聴きどころの多い公演になりそうだ。
取材・文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年9月号から)

仲道郁代&川久保賜紀 デュオコンサート
9/22(火・休)14:00
雲南市加茂文化ホール ラメール
問:雲南市加茂文化ホール0854-49-8500
9/25(金)19:00 長岡リリックホール
問:長岡リリックホール0258-29-7715

【CD】
『アンコール!』
エイベックス・クラシックス
AVCL-25871
(SACDハイブリッド盤)
¥3000+税