【CD】アクロス福岡開館30周年記念 アクロス・バースデーコンサート/安永徹&九響 他

 安永徹がコンサートマスターとして座った、指揮者なしの九州交響楽団は、モーツァルトの冒頭から、弦がしなやかに歌い、生き生きとした主題を提示する。ピアノ独奏の市野あゆみと仁田原祐は、息もぴったりで、豊かな表情で語り合う。その対話は溌溂として、実に楽しい。シューベルトの交響曲第3番では、18歳の作曲家の瑞々しい感性があちこちで輝いている。ウキウキするような精神の躍動があり、歌に溢れ、あてどなくさすらう。安永の統率により、作曲家の原点を感じさせる見事なシューベルト演奏となっている。ウォーロックの組曲は、古い舞曲を近代的に焼き直したもので、なかなか味わい深い。
文:横原千史
(ぶらあぼ2025年10月号より)

【information】
CD『アクロス福岡開館30周年記念 アクロス・バースデーコンサート/安永徹&九響 他』

モーツァルト:2台のピアノのための協奏曲/ウォーロック:カプリオール組曲/シューベルト:交響曲第3番 他

安永徹(ヴァイオリン)
市野あゆみ 仁田原祐(以上ピアノ)
九州交響楽団

収録:2025年4月、福岡シンフォニーホール(ライブ)
ナミ・レコード
WWCC-8037 ¥3300(税込)