【CD】他人の顔~ヴァイオリン&ピアノ作品集 /石上真由子&江崎萌子

 「デュオM&M」として活動する、石上真由子と江崎萌子による小品集。シマノフスキは妖しくも明瞭、エルガー、ワーグナーらの愛すべき旋律は滋味深く、新編曲の『他人の顔』〈ワルツ〉は新たな定番になりそう。曲順の流れも良く、各曲とも聴きほれてしまう仕上がり。ことに驚かされたのが、真に「対等」に奏でられた「スペイン舞曲」(抜群のキレ!)と「愛の喜び」で、ピアノにどれほど大切な音があるか自ずと耳が行く精妙な構築、でも表現は自由闊達。二人はもはや“合わせる”のではなく“同期する”かのよう。「両者が対等」の何たるかを示す、「協奏」をこえた「共奏」の真髄。 
文:林 昌英
(ぶらあぼ2025年9月号より)

【information】
CD『他人の顔~ヴァイオリン&ピアノ作品集 /石上真由子&江崎萌子』

シマノフスキ:神話/エルガー:カリッシマ/ファリャ(クライスラー編):スペイン舞曲第1番/ワーグナー(ヴィルヘルミ編):アルバムの綴り/クライスラー:愛の喜び/武満徹(松﨑国生編):弦楽オーケストラのための「3つの映画音楽」より『他人の顔』〈ワルツ〉 他

石上真由子(ヴァイオリン)
江崎萌子(ピアノ)

キングレコード
KICC-1631 ¥3300(税込)


林 昌英 Masahide Hayashi

出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。