秋の北九州に名演奏家たちが集結!「2025北九州国際音楽祭」の聴きどころ

 今秋「2025北九州国際音楽祭」が開催される。同音楽祭は多彩な内容と音響の良い720席の北九州市立響ホールを中心にした好環境が魅力。以下有料公演の見どころをご紹介しよう。

左より:ハーゲン・クァルテット ©Harald Hoffmann/谷 昂登 ©井村重人

 まずは響ホールにおけるオリジナル企画から。最も目を引くのがハーゲン・クァルテットの登場(11/15)だ。40年以上の練磨がもたらす精緻かつ味わい深いアンサンブルで世界のトップに位置する同四重奏団は、25/26シーズンでの引退が発表されただけに、ここはぜひ聴いておきたい。今回は、ハイドンの「騎士」とベートーヴェン最後の弦楽四重奏曲で円熟の至芸を披露し、谷昂登とのシューマンのピアノ五重奏曲で清新な刺激を与える。ピアノの谷は、多数の受賞歴を持つ俊才で、北九州市の出身。こうした地元出身者の参加が同音楽祭の特徴でもある。

左より:篠崎史紀 ©井村重人/上野耕平 ©Yuji Ueno/住谷美帆

 やはり地元出身の元・N響の顔、“まろ”こと篠崎史紀がコンサートマスターを務める「マイスター・アールト×ライジングスター オーケストラ」(11/23)も名物公演だ。この楽団は、国内主要オケの首席級奏者による「マイスター・アールト組」と、オーディションで選ばれた優秀な若手演奏家を核とする「ライジングスター組」で構成。指揮者は置かず、メンバーの自発的なアプローチによる生き生きとした演奏を旨としている。しかも今回のメインは何とベートーヴェンの「第九」交響曲。あの「第九」が指揮者なしでいかに表現されるのか? 実に興味深い。

 「上野耕平&住谷美帆 サクソフォン デュオ・リサイタル」(11/9)もここだけの企画。新世代の先頭を走る上野と、「展覧会の絵」のCDで驚嘆させた上昇株・住谷は、共にコンクール受賞歴も豊富な抜群の技量の持ち主だけに、同楽器デュオの新鮮なサウンドに酔いしれる貴重な機会となる。

左より:三浦一馬 ©日本コロムビア/関 朋岳 ©井村重人/佐藤晴真 ©Seiichi Saito/ニュウニュウ ©Yuji Ueno

 「三浦一馬(バンドネオン) 関朋岳(ヴァイオリン) 佐藤晴真(チェロ) ニュウニュウ(ピアノ) ─スーパー・ソロイスツ─」(11/29)もまたフレッシュだ。世界的奏者や天才奏者が居並ぶこのアンサンブルが、ピアソラ・プログラムで展開するコラボはまさに予測不能。ここは俊英たちの丁々発止のやりとりを楽しみたい。

左より:堤 剛 ©鍋島徳恭/スティーヴン・イッサーリス ©Tom Miller/横坂 源 ©Sotaro Goto/上野通明 ©Seiji Okumiya

 響ホールでは、これらのオリジナル企画以外にも豪華な公演が行われる。「堤剛×スティーヴン・イッサーリス×横坂源×上野通明(チェロ・アンサンブル)」(10/18)は、世界のトップ奏者と日本の各世代の代表格が揃った垂涎のコラボ。様々な組み合わせによるチェロ音楽の醍醐味を堪能できる。

左より:キリル・ゲルシュタイン & 藤田真央 ©Kaupo Kikkas/鳥羽咲音 ©Julia Wesely

 「キリル・ゲルシュタイン&藤田真央(2台ピアノ)」(12/7)もまた豪華。世界的奏者と世界に羽ばたく俊才のコンビネーションはすでに高評価を得ている。今回はシンフォニックな趣の濃いプログラムで、ピアノ2台ならではの音楽世界を満喫させる。

 風情のある西日本工業倶楽部(旧松本家住宅)でのサロン・コンサートも名物公演の1つ。今年は鳥羽咲音(チェロ)のリサイタル(11/5)が行われる。2005年ウィーン生まれの彼女は年齢を感じさせない超実力者。その辣腕をぜひ体験されたい。

 かようにハイクオリティな同音楽祭。1つでも多くの公演に足を運びたい。

文:柴田克彦

(ぶらあぼ2025年8月号より)

2025北九州国際音楽祭
2025.10/18(土)〜12/7(日) 北九州市立響ホール 他
問:響ホール音楽事業課093-663-6661 
https://www.kimfes.com
※音楽祭の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。