ヴァレリー・アファナシエフ(ピアノ)

バッハとシルヴェストロフが出会う時


 “鬼才”・“奇才”と称され、強いカリスマ性を放ち続けるピアニスト、ヴァレリー・アファナシエフがトッパンホールに登場する。深い思索、厳しさ、そして愛に満ちた彼の音楽観が、鍵盤音楽の最高傑作の一つであるバッハの「平均律クラヴィーア曲集」をもって聴衆の前に立ち上る。文学者であり、哲学に通じるアファナシエフの研ぎすまされた知性が、理数的な美を感じさせるバッハの構造美を確かに、そして力強く伝えてくれることだろう。「平均律」から演奏されるのは、第1巻の第1・8・22番、および第2巻の第5・7・8・9・14・16番だ。そして1巻と2巻の間には、ウクライナの現代作曲家シルヴェストロフの作品が2つ挿し込まれている。調性を臆することなく用い、静謐かつドラマ性に富んだシルヴェストロフの作品は、聴く者の追憶の扉を開けてしまう。アファナシエフの温かくもどこか孤独な様相を帯びる音色によって、心抉られるような聴取体験となるかもしれない。特別な一夜になりそうだ。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年6月号から)

6/25(木)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
http://www.toppanhall.com