
右:トウキョウ・ミタカ・フィルハーモニア
三鷹市芸術文化センターの開館と、同館を本拠とするトウキョウ・ミタカ・フィルハーモニア(結成時はトウキョウ・モーツァルトプレーヤーズ)の結成は1995年。それぞれ今年30周年を迎えた。7月の第91回定期演奏会は、同楽団を創立した三鷹市出身の音楽監督・沼尻竜典が、彼ならではのウィーン・プログラムを披露する「記念演奏会」となる。
まず、2001年から継続する、沼尻の弾き振りによるモーツァルトのピアノ協奏曲全曲シリーズの第23弾。今回は11歳で作った第3番で、実演機会は稀少。若さと意欲あふれる音楽を、沼尻が颯爽と奏でる。次はシューベルト「未完成」。3月の定期で好評を博した「グレート」に続いての同作曲家で、沼尻と同楽団の充実が示されるだろう。早世の2大天才作曲家の作品が並び、少年の希望と勢いに満ちた協奏曲と、20代にして彼岸の境地を覗いてしまった交響曲、という対比も意義深い。
そして、ヨハン・シュトラウスII世の喜歌劇《こうもり》! 名場面のスペシャル・セレクションで、華やかに盛り上がるに違いない。歌手陣は萩原潤(アイゼンシュタイン)、船越亜弥(ロザリンデ)、冨平安希子(アデーレ)、黒田祐貴(ファルケ)、重島清香(オルロフスキー公爵)。そのまま舞台公演が成立するほどの豪華メンバーで、とくにロザリンデとアデーレの技巧的なアリアの応酬は楽しみ。オペラの名指揮者である沼尻を中心に、記念公演にふさわしい、憂いを吹き飛ばすステージを作り上げる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2025年7月号より)
沼尻竜典(指揮) トウキョウ・ミタカ・フィルハーモニア
2025.7/27(日)15:00 三鷹市芸術文化センター 風のホール
問:三鷹市スポーツと文化財団0422-47-5122
https://mitaka-sportsandculture.or.jp

林 昌英 Masahide Hayashi
出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。

