王子ホール transit Vol.5 アレクサンダー・クリッヒェル(ピアノ)

“歌うピアノ”で聴きてを魅了

©Uwe Arens
©Uwe Arens

 王子ホールが若き才能を紹介するシリーズ『transit』。第5弾はハンブルクの新星アレクサンダー・クリッヒェルが登場する。知的かつ人間味に富んだ音楽性を持ち、すっきりとした歯切れの良いタッチを自在に操る26歳。なんと数学者としての顔も持つ。22歳でソニー・クラシカルと専属契約を結び、最新アルバムではメンデルスゾーンの「無言歌」やリスト編曲のシューベルト歌曲などを選曲した。
 そんな“歌うピアノ”を得意とするクリッヒェルが、『transit』ではシューベルト=リストの「セレナード」と「魔王」を聴かせる。また彼は、「ショパンは私にとってロマン派のモーツァルト」という独特の見解を持つ。ショパン17歳の意欲作「モーツァルトの《ドン・ジョヴァンニ》の〈お手をどうぞ〉による変奏曲」をプログラムに組み込んだ。後半は「人が表現でき得る感情全ての描写」と語るラフマニノフの「楽興の時」(全6曲)。スマートな響きに酔いしれたい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年7月号から)

7/7(火)19:00 王子ホール
問:王子ホールチケットセンター03-3567-9990
http://www.ojihall.jp