
フォルテピアノ奏者トマシュ・リッテルが、TOPPANホールに初登場。第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで川口成彦と雌雄を決して勝利、その後、ブルージュ国際古楽コンクールでも優勝に輝いたポーランドの新鋭だ。
プログラムが充実しているのはTOPPANホールならでは。まず目を引くのは、ショパンの「バラード」全4曲だ。陰影も豊かな1843年製プレイエルでの演奏となる。リッテルの弾くショパンは、明瞭なだけではなく、じつに官能的だ。弦をそのまま爪弾いたような肉感的な繊細さも伴いつつ、ドラマに満ちたショパンを響かせてくれるのではないか。
プログラム前半では、ベートーヴェンとメンデルスゾーンを組み合わせる。ベートーヴェンはソナタ第1番、そして創作主題による32の変奏曲。コンラート・グラーフを弾いたCD録音では、走馬灯が倍速で回転するような鮮烈な変奏曲を聴かせていた。そして、「無言歌集」から6曲。一転して抒情がむんむんと薫り立つことだろう。
プログラム前半は、まだどのピアノで弾くか決まっていない。候補はショパンを弾く予定のプレイエル、そして先日ホールに導入されたばかりのヴィンテージ・ベーゼンドルファー(1909年製)の2つ。リッテル自身が来日後、試し弾きをして決定するという。当日のお楽しみがまた増えた。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2025年5月号より)
トマシュ・リッテル(フォルテピアノ)
2025.6/25(水)19:00 TOPPANホール
問:TOPPANホールチケットセンター03-5840-2222
https://www.toppanhall.com