
右:中原梨衣紗 ©Ayako Yamamoto
クラシック界の未来を担う16歳のヴァイオリニスト、中原梨衣紗(りいさ)。10歳で全日本学生音楽コンクール全国大会第1位、11歳でドイツのクロスターシェーンタール国際ヴァイオリンコンクール(14歳以下の部)第1位、2024年日本音楽コンクール第2位の俊才。
中原が今回挑むのは、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番。「パガニーニらしい華やかで明るい旋律が魅力的で、演奏するたび胸が高鳴る」と語る。ヴァイオリンの超絶技巧を極め、オペラ的な要素もある名曲をどう表現するのか、大きな期待が寄せられている。
彼女の魅力は、圧倒的なテクニックだけではない。最近チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を聴く機会があったが、端正な音の一つひとつに、確固たる音楽への信念が息づいていた。オーケストラに負けない芯の強さがあり、抒情的な部分では美音で柔和な感情を紡ぎ出し、時にオーケストラをリードする堂々とした演奏ぶりだった。
6月の公演で指揮を務めるのは、ブカレスト国際指揮者コンクール準優勝の和田一樹。ドラマ『のだめカンタービレ』や映画『マエストロ!』の指揮指導を担当し、国内外で活躍する実力派だ。彼のダイナミックかつ繊細な指揮が、新日本フィルハーモニー交響楽団の響きを引き立て、中原の挑戦を強力にサポートする。プログラムの締めくくりには、ベートーヴェンの交響曲第7番が控えている。舞踏的なリズムが特徴のこの名曲を、和田がどう描き出すのかも聴きどころのひとつ。「新しい風」が吹き込む瞬間を、ぜひ会場で体感してほしい。
文:長谷川京介
(ぶらあぼ2025年5月号より)
和田一樹(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団
特別演奏会 “新しい風” 名曲コンサート vol.3
2025.6/6(金)19:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィルチケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp