尾高忠明&読響のブル9——円熟のコンビによるブルックナー最後の交響曲

尾高忠明 ©読響

 尾高忠明が5月27日の読売日本交響楽団定期演奏会でブルックナーの交響曲第9番を指揮する。若き日にウィーンで学んだ尾高にとって、ブルックナーは最も大切な作曲家の一人である。今年2月には大阪フィルの定期演奏会および東京公演で交響曲第4番「ロマンティック」を指揮して名演を繰り広げたばかり。読響とは1996年にも交響曲第9番を取り上げている。今回は、ベンヤミン=グンナー・コールスによる校訂版(2000年)を使用。尾高は、1992年から98年まで読響の第6代常任指揮者を務め、現在は名誉客演指揮者のポストにある。円熟の関係にある尾高&読響が感動的なブルックナーの交響曲第9番を聴かせてくれるだろう。

 演奏会の前半では、尾高忠明の父、尾高尚忠の交響的幻想曲「草原」(1944年初演)が演奏される。第二次世界大戦中、日本の作曲家によって、アジアを題材としたオーケストラ曲が少なからず作られた。「草原」もそんな作品のひとつ。同曲では、モンゴルの大草原や太古の騎馬民族の幻想が描かれる。1944年3月に作曲者自身の指揮する日本交響楽団(現・NHK交響楽団)によって初演されたが、戦後はほとんど演奏されていない(2017年の下野竜也指揮東京フィルの演奏があるくらい)。今回、その幻の作品が息子の指揮によって蘇る。尚忠は最晩年に日響との最後の定期公演でブルックナーの交響曲第9番を指揮した。この日のプログラムはまさに忠明が父に捧げるものだといえよう。

文:山田治生
(ぶらあぼ2025年5月号より)

尾高忠明(指揮) 読売日本交響楽団 第648回 定期演奏会 
2025.5/27(火)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390 
https://yomikyo.or.jp