来たる3月、全国3都市で開催する無伴奏リサイタル

東京藝大を卒業後、ARDミュンヘン国際音楽コンクール第2位入賞、その後ウィーンを拠点に長くヨーロッパで活動し、2020年4月より2023年3月までNHK交響楽団ゲスト・コンサートマスターを務めた白井圭。オーケストラ(ソリストおよびコンマス)や室内楽など、アンサンブルを中心に演奏活動をしてきた彼が、昨年ついに無伴奏リサイタルに挑んだ。そして、今年は3都市3公演に拡大して開催する。東京公演はすでに完売ということからも注目度の高さがうかがえる。昨年の演奏会を振り返って、そして今年の公演への思いを聞いた。
—— 昨年3月、大阪で行った初の無伴奏演奏会はいかがでしたか?
一言で表すと、とても大変でした(苦笑) 僕は普段ひとりで音楽に向き合う時間より、室内楽で仲間と音楽作りをする機会が多いので、ひとりで一つの作品、一つの演奏会を成立させなければならないということは、想像以上に難しいものでした。その作業をいつもやっているピアニストには頭がさがる思いです。今回も孤独な闘いがやってくるなという恐れと、達成した時の喜びのどちらも楽しみにしています。
—— 今年の演奏会へはどのように臨みますか?
実は去年、曲目を考えながら、今後に繋がってもいいなというプログラム(バッハの無伴奏から2曲、パガニーニのカプリスより最初の4曲)にしていました。ですから今年も機会をいただけてとても嬉しく思っています。40歳を超えて身体の運動機能の変化はどうしても感じるので、できるうちに、譜面台を温める存在だった大いなる作品たちを、世に送り出していけるように色々チャレンジしていきたいと思っています。バッハは全曲弾き終わっても、もう一度別の順番でやってもいいですし、いくら目指しても完成形なんてないですから。演奏会が終わった途端に「ああ次はこうしてみよう」ということが出てくるので、今回の3公演も毎回違うものが生まれると確信しています。反省と成長がなかったら意味がないと思いますし、まったく同じことを再現しようという気持ちもない。同じアプローチだとしても同じ演奏になるなんてあり得ないのが音楽ですから。できるなら全公演、聴き比べてみてほしいです(笑)
—— 今回はバッハとパガニーニ以外にヴァインベルクを取り上げますね。
ヴァインベルクは1919年ポーランドのユダヤ家庭に生まれたので、幼少期から社会情勢に翻弄された人生でした。身近にある争い、犠牲になる人たちに痛みを感じ、それでも救いを求め、理不尽と思われる事象に抗う心の表出など、作品から滲み出る作曲家の想いが、今この世界が抱える問題を良い方向に持っていく助けになることを願って選曲しました。
この作曲家は近年再評価されていて、以前ヴァイオリン・デュオを弾いたことがありましたが、この無伴奏作品には初めて取り組みます。作曲家のどのような姿が出てくるか、僕も楽しみです。
取材・文:編集部
白井圭 無伴奏ヴァイオリン・リサイタル
2025.3/8(土) 13:30 二本松市コンサートホール
問:二本松音楽協会 080-4519-0454
https://pcreate-f.com/nma/
3/22(土)14:00開演 大阪フィルハーモニー会館
問:KCMチケットサービス 0570-00-8255 03-5379-3733
https://www.kojimacm.com/index-j.html
3/25(火)19:00 武蔵野市民文化会館 小ホール【完売】
問:武蔵野文化生涯学習事業団文化事業部 0422-54-2011
https://www.musashino.or.jp/bunka/index.html
曲目
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト短調 BWV1001
ヴァインベルク:ヴァイオリン・ソロのためのソナタ op.82(1964)
パガニーニ:24のカプリース op.1 より 第5番 イ短調・第6番 ト短調・第7番 イ短調・第8番 変ホ長調
J.S.バッハ:無伴奏パルティータ 第1番 ロ短調 BWV1002