【公演中止・延期】ミハイル・プレトニョフ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団

絆を深めた名コンビがおくる、感動の冒険物語

ミハイル・プレトニョフ ©上野隆文
ミハイル・プレトニョフ ©上野隆文
 清々しい「朝」、烈しい「山の魔王の宮殿にて」、切ない「ソルヴェイグの歌」…。これらは何度も耳にしながら、5幕の劇付随音楽全体を生で聴く機会などまずないのが、グリーグの「ペール・ギュント」。だが4月の東京フィル定期でそれが叶う。態勢も万全。ミハイル・プレトニョフの指揮に、ソルヴェイグ&ペール役の歌手(ベリト・ゾルセット、大久保光哉)と新国立劇場合唱団が加わり、人気俳優の石丸幹二が語りを務める。
 名ピアニストにしてロシア・ナショナル管を率いる名指揮者プレトニョフと、東京フィルの相性は抜群。2003年以来定期的に共演を重ね、幾多の名演を披露してきた。その演奏は、引き締まっていてドラマティック。東京フィルの俊敏な対応と相まって、常に耳を惹き付ける。それあって彼は4月から同フィルの特別客演指揮者に就任。本演目で就任初公演&新シーズンの開幕を飾る。しかも定期シリーズ3会場の全てで演奏するのだから、意気込みも半端ではない。
 プレトニョフは、ボリショイ・オペラの日本公演で、迫真の《スペードの女王》を聴かせ、昨年10月の東京フィルとの共演では、スクリャービンの交響曲第1番(声楽付きの6楽章の大作)で構築性の高さを示すなど、長尺ものも巧い。イプセン作の物語「ペール・ギュント」は「伝説の放蕩児ペールが、様々な土地を渡り歩き、次々と娘に恋をし、財を成しても詐欺や難破に遭う。しかし清純なソルヴェイグはけなげに帰りを待つ…」といった波瀾万丈の冒険譚。その展開も楽しみだし、進行に即して聴けば周知の曲も耳新しいに違いない。あらゆる点で期待が膨らむ公演だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年4月号から)

第862回 オーチャード定期演奏会 
4/19(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
第863回 サントリー定期シリーズ 
4/20(月)19:00 サントリーホール
第93回 東京オペラシティ定期シリーズ
4/22(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522 
http://www.tpo.or.jp